Jewels of Nostalgia

Welta Welti (Early Model Type A)
Carl Zeiss Jena Tessar F2.8/50mm
Compur-Rapid TB,1sec. - 1/500sec.
circa 1935, Made in Germany

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ウェルタ(ヴェルタ)社は、1914年、旧東ドイツ・ドレスデン近郊の Freital に、"Waurich & Weber Welta Kamera-Werk" として創業したカメラメーカーである。バルダ社同様、多種多様なフォールディングカメラの生産を行なったことで知られている。
第二次世界大戦前には、「ソリダ(Solida)」、「ウェルツル(Weltur)6x9、6x6、6x4.5」、「ペルレ(Perle)」などの中版カメラの名作を生み出している。いずれも、ラック&ピニオン式フォーカシング機構を備えるなど(Perleを除く)、操作性の良さでは定評のあるカメラであった。
また、ウェルタ社は、「パーフェクタ(Perfekta)」、「スーパーフェクタ(Superfekta)」などのユニークな二眼レフカメラの開発でも知られている。いずれもフォールディングカメラ派生の折り畳み可能な二眼レフであり、特にスーパーフェクタは、6x9版レボルビングバック仕様という二眼レフとしては特異な構造を持ち、カメラ史上、異彩を放つものとなっている。

ウェルタ社は、35mm版フォールディングカメラの開発に関しても比較的早くから取り組んでおり、1930年代には、距離計無しの "Welti"、距離計無し廉価版の "Weltix"、連動距離計付の "Weltini" の三機種を製造していた。
これら、三機種の中でも最も良く知られているモデルが、"Welti" である。Welti は、堅牢な軽合金ダイキャスト製ボディに、カールツァイス・テッサー、シュナイダー・クスナーなどのレンズを取り付けたフォールディングカメラであり、梨地加工クロームメッキのトッププレート・ボトムプレート、フィルムカウンター同軸ボディレリーズシャッターなどが印象的な、同時代のコダック・レチナのライバル的存在として知られるカメラである。

多くの研究がなされているコダック・レチナに比べ、ウェルチに関する文献は少なく、今なお不明な点が多い。第二次世界大戦後、ウェルタ社は東ドイツに属し、VEB Welta として人民公社化された。東ドイツ時代には、再生産版 Welti I、改良版 Welti Ic などが生産されたが、この人民公社組織は多くの統廃合を繰り返し、いつしか "Welta" のブランドも無くなってしまった。このことが情報散逸を招いた可能性は大きい。東西ドイツ統合が果たされた現在、ウェルチに関する不明点の解明が進むことを祈るばかりである。

このページのモデルは、ウェルチのごく初期のモデルと思われる。初期型ウェルチには他の特徴を持つものもあるため、便宜上、このページのモデルを "初期型 Type A"、もうひとつのタイプを "初期型 Type B" と呼ぶことにする。
いずれも製造年は特定できないが、装着レンズのシリアルナンバーから推測すると、Type A が 1934〜1935年、Type B が 1936年頃の製造と思われ、Type A の方が古いモデルと考えられる。


この初期型 Type A で最も特徴的な点は、ボディの横断面の形状である。このモデル以降のすべてのウェルチが曲線的コーナーを有しているのに対して、このモデルは直線的に面取りされたコーナーを持ち、ボディは八角形となっている。この形状は、コダック・レチナと非常に良く似ており、あたかもレチナのボディを流用したかのように見えるが、外寸が異なる上、内部機構は全く異なるウェルチ独自のものとなっている。

レンズはカールツァイスイエナ・テッサーである。イエナ製レンズは、これまでのツァイス研究者たちの努力により、シリアルナンバーから大凡の製造年代を割り出すことが可能であり、それによると、このレンズの製造年は、1934〜1935年頃と思われる。

戦前のノンコートレンズのため、コントラストはやや眠く、カラーバランスもアンバー傾向であるが、シャープネスは充分で解像感は良く、クスナーに似た繊細な描写である。
フォーカシングは前玉回転ではなく、レチナ同様、ヘリコイド回転による全群移動である。

軍艦部の配置は、左から巻き戻しノブ、アクセサリシュー、ファインダー、フィルムカウンター、巻上げノブとなっている。
フィルムロック解除ノブ/ボタンは特に存在せず、巻上げノブを軽く引き上げることで、フィルムリリースを行ない、次の巻上げができるようになっている。

なお、このモデルにはボディ上にシャッターボタンは無く、鏡胴シャッターユニットのレリーズレバーを直接操作してシャッターを切る仕組となっている。

軽合金ダイキャスト製のボディ内部は、後期型ウェルチとほとんど同じであり、レチナとは全くの別物である。
特にスプロケットシャフト上部のギア機構は、1930年代の Welti はもとより、1950年代に東ドイツで再生産された Welti IWelti Ic にまで受け継がれ、ウェルチを象徴する機構となっている。

ボディ底面、巻き取りスプール下部の円盤は、リバースクラッチ解除用ノブである。このノブを引き抜くと、巻き取りスプールのクラッチが解除され、フィルムリワインドが可能となる。

よくまとまった美しい外観である。
八角形ボディが、以降のモデルに継承されなかったのは、あまりにもレチナに似すぎているため、コダック社から抗議を受けたなどの事情があったためだろうか。
そもそも、1930年代のウェルタ社製中版フォールディングカメラ、Wertur、Weltax などは直線で面取りされたボディコーナーを有する八角形ボディであり、35mm判の製品が同様のデザインとなっても何ら不思議は無いところである。
ウェルチがラウンドコーナーボディとなった真の理由は不明であり、今後の研究に期待したいところである。




実写例

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