Jewels of Nostalgia

Balda Baldinette
Schneider Kreuznach Radionar F2.9/50mm
Prontor-S B,1sec. - 1/300sec.
1951, Made in Germany

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Balda Baldinette は、1938年にバルダ社創立30周年を記念して発売された Jubilette の改良再生産版である。クロームメッキの軍艦部でファインダーや巻上げノブを覆い、若干の近代的デザインを施した他、機構的には Jubilette とほとんど変りがない。クロームメッキの軍艦部を外せば、板金プレス加工モナカ構造を示す、カメラを前後に分けるラインが現れる。

左様、カメラ自体はほとんど変わっていないが、メーカーは大きな変化を遂げた。その変化とは本社・工場所在地の移転である。
Jubilette の項で述べたとおり、バルダ社は旧東ドイツ・ドレスデン発祥のカメラメーカーであり、主要工場もドレスデンに存在した。しかるに、第二次世界大戦後、バルダ社はドレスデンから、西ドイツ・ノルトラインヴェストファーレン州 Bunde に本社・工場を移転しているのである。

ドレスデンは、第二次世界大戦後、ソ連軍の占領下におかれ、やがて東ドイツとなった街である。第二次大戦末期の大空襲による工場・施設などの壊滅的被害も理由のひとつと思われるが、おそらくは、ツァイスグループの東西分断と同様の経緯があったのであろうと思われる。
もっとも、これは西ドイツ移転グループが商標としての Balda ブランド使用権を得ていたにすぎないとも考えられる。というのも、ドレスデン残留グループの製作と推察される Baldina 〜 Jubilette の再生産版カメラ Belca Beltica が存在するからである。このあたりの経緯は詳細不明ながら、興味は尽きないところである。

このバルディネッテは、Baldina 〜 Jubilette と続いたバルダ製35mm蛇腹カメラの最終モデルである。(厳密には二重像合致式距離計付の Super Baldinette が最終モデル。)精密感、高級感にこそ欠けるが、頑丈で信頼感あふれる板金プレスのボディ。無骨だが幅広で壊れそうにもない蛇腹のタスキ。1950年代だというのに前蓋に残るディスプレイスタンドや裏蓋の被写界深度一覧表。デザインというものとは縁遠い実用一点張りの構造ながら、張皮に刻まれた "Baldinette" の流麗なエンボス。実にカメラらしいカメラである。

戦後のバルダ社は、バルディナ(新)、スーパーバルディナ(新)、バルデッサ、バルダマチックなど、戦前と同じく中級機を主体に発売していくことになった。また、基本的なボデイ構造は同じながら、様々なレンズ・シャッターの組み合わせにより、多様なユーザーのニーズに応じていたのも戦前と同じであった。この Baldinette の場合も、下表のような組合せが存在する。

LensShutter
Schneider Xenar F2.9/50mm
Schneider Radionar F2.9/50mm
Balda Rigonar F3.5/50mm
Balda Baldanar F3.5/50mm
Enna Ennagon F3.5/50mm
etc.
F.Deckel Synchro-Compur
F.Deckel Compur Rapid
F.Deckel Compur
AGC Prontor SVS
AGC Prontor S
AGC Pronto
etc.

いずれもエントリー〜ミドルクラスばかりで、何故にこれほどの組合せをラインナップしたのか見当がつかない。また、外見はほとんど同じながら名前の異なるモデルが多いことも特色である。同社の "Balda Rigona"、米国 Peerless Camera の販売による "Rival 35" などの類似機種が存在し、銘板、エンボスが無ければ、これらの区別はほとんどつかない。


レンズはシュナイダークロイツナハ・ラディオナー。3群3枚のトリプレットである。戦後のものだけに、単層コーティングが施されている。
周辺画像の流れや円弧状ボケはあるものの、コントラスト、発色、シャープネスともに三枚玉としては出色の描写であり、シュナイダーというメーカーの底力を垣間見せられる思いがするレンズである。

梨地クロームメッキの軍艦部。
左から巻き戻しノブ、シャッターレリーズボタン、ファインダー、アクセサリシュー、前蓋開放ボタン、フィルムカウンターとなっており、基本的な配置は Jubilette とほとんど同じである。
Jubilette と異なる点は、軍艦部をクロームメッキのカバーで覆ったことくらいである。初期モデルではクロームメッキカバーがカウンター、ファインダー部分のみとなっており、Retina I のような形状をしたものもあった。

前蓋を閉じた状態。
写真の左下、すなわちボディ右下底部の大型ノブでフィルム巻上げを行なうのは、Jubilette と同じ。ノブ横のフィルムリリースボタンを押した後でないと、フィルムが巻き上げられないのも、Jubilette と同じである。
また、フィルムリワインド時には、巻上げノブを引き上げるのも、Jubilette と同じである。

この位置から見ると、ボディ底部のカメラを前後に分けるラインがはっきりと分かる。板金プレス・モナカ構造の証である。




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実写例
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