あいちの高優賃

(2007.7.8)


けやき館 (2007.6.28)
グローバルコート森岡 (2006.2.10)
Livable CLOVER (2006.2.10)

 団塊の世代の大量退職が始まり、高齢社会の問題がいよいよ現実のものとして感じられるようになってきた。福祉の分野でも、介護保険制度の導入以降、新たな施策や体制が整備されているが、住宅の分野でも高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)を始め、高齢者円滑入居賃貸住宅制度や高齢者専用住宅などの新たな仕組みが始められている。
 高齢者向け優良賃貸住宅だけ取り上げても、事業者により様々なかたちがあるようだ。愛知県内の高優賃について、機会があるごとに見学をしていきたいと思っている。

■ けやき館 (2007.6.28)

 愛知県の場合、政令市である名古屋市に加え、豊橋市、岡崎市、豊田市の各中核市も、県とは独立して、それぞれの認定基準の下に高優賃の認定を行っている。豊橋市が認定した高優賃が完成し、見学会が開かれたので参加してきた。
 市内で介護事業を営む個人が事業者となって建設した今回の高優賃。市の中心を横断する国道1号線に面し、市役所から歩いて5分ほど。豊橋駅から出発する路面電車に乗ってわずか3駅。北に数分歩けば豊橋公園が広がり、環境的にも利便性にも恵まれた好地に立地する。事業者の経営する介護事業所も指呼の間。こんな環境ながら、1K(4戸) 31,100〜50,000円、1DKL(10戸) 41,600〜55,000円、2DK(3戸) 62,800〜65,000円(所得に応じ決定。市の家賃補助がなくなる20年後は後者の家賃)という低家賃。2月から募集を開始し、7月1日からの入居を控えた6月28日現在、1Kで辞退があり1戸の空きがあるものの、1DKLでは逆に4戸の待機があるなど、かなり好評と言っていいだろう。
 建物はRC造6階建て。住戸内には緊急通報サービスや安否確認サービスがつき、1階の1室は入居者向けの生活支援施設が付設されている。事業者が介護事業を営んでいるということで、当然その事業所と連携したサービスが行われるのかと思ったが、あに図らんや、全く連携が取られていないのは意外。安否確認サービスは基本的に登録した親族に通知。緊急通報サービスも廊下でベルが鳴り響き、隣接住戸の住民に期待する仕組み。「それで大丈夫か?」との質問に、市役所の職員から「市営住宅も同様の方式で特に問題は起こっていない。」という返事。住民相互のコミュニティを高めるために生活支援施設が設置されているというが、特に管理側のサービスは予定しておらず、ご自由にお使いください、というスタンスとのこと。それなら、例えばドアや窓の透明性を高め外から誰が利用しているか分かるようにするなどの、もう少し入りやすい仕掛けがあってしかるべきのようにも思うけれど、「市としても今後どのように利用されるか留意し、必要に応じた対応をしていく予定です。」という言葉に期待しよう。民間事業者と行政との距離の近さが、市町村が認定者となっていることの長所であり特長だと言えるだろうから。
 IHクッキングヒーター、ウォシュレット、洋室にエアコン完備(ちなみに和室はなし)、玄関の収納付きベンチ、天井に調湿木炭など、一通りの設備や機能は整っており、駐車場も完備。都心の高齢者向けマンションとして、高級ではないが、一般的に満足のいくレベルにはあり、立地・家賃も考えれば、子供世帯が市内に居住する高齢者や、市内で2世帯居住する世帯、また子供に現在の広い住宅を譲り自分たちは都心の便利な住宅で暮らそうという高齢者などに、それなりの人気があったことも納得できる。ただし、本当の意味の高齢者問題が発生した場合の対応がこれで十分かどうかは、なんとも言えない。豊橋という土地柄であればこれで十分、という言葉を信じたい。

外観 / 収納付きベンチ / 緊急通報システム

■ グローバルコート森岡 (2006.2.10)

 介護保険制度の見直しに伴い、特定施設入居者生活介護サービスの対象となる特定施設の基準が拡大され、高優賃(高齢者向け優良賃貸住宅)や高齢者専用住宅も対象になるということで、最近特に高優賃等に対する関心が高まっている。小春日和の1日、愛知県内の既存の高優賃を2棟、見学をしてきた。
 まず向かったのは、東浦町にある「グローバルコート森岡」。JR武豊線「尾張森岡」駅徒歩約1分という立地だが、武豊線自体が東海道線の支線だし、必ずしもまちなかというわけではない。しかし、歩いて数分のところに大型ショッピングセンターもあり、同一敷地内に診療所、同一棟1階にはデイサービスセンターもあり、利便施設という点では不自由はない。RC造8階建ての2〜8階に全部で21室あり、たまたま1室空いているということで見学させてもらった。専用面積40.8m2の1DKで、契約家賃が6万円。家賃補助があり、最も所得が低い階層では39,000円になる。
 中は明るく眺望も良くてなかなかいい感じ。居間の一画に緊急通報装置がついている。入居者は60歳以上が条件だが、60〜70才の単身者が多く、男女比率は3:7位とのこと。駐車場は4台分あるが今は3台しか契約されていないとのことだった。死亡などにより入居者の入れ替えはあるが、新規入居者は既入居者の口コミということも多いそうだ。子供世帯が比較的近く(知多地域)に住んでいるケースが多いとのこと。
 先日見た岐阜県瑞浪市の高優賃リコシエ村と比べ、何ということはない普通の賃貸マンションだが、利便施設も近接しており、安心して暮らしていけそうな、なかなか快適な住宅だった。

エレベーター前のベンチ / 1階のデイサービス / 緊急通報装置


Livable CLOVER (2006.2.10)

 この日、もう一つ見学したのが、碧南市の「Livable CLOVER」。碧南市は西三河西部の南端、名鉄三河線の終点に近い碧南中央駅から徒歩11分ということで、都市部ではないが、人口7万人の碧南市の中では、市役所にも近いまちの中心部と言える。比較的広い幹線道路沿いにオレンジの外観は、1階のデイサービスの看板ともどもけっこう目立つ。建物の前には、市の巡回バスのバス停がある。
 RC造4階建ての2〜4階部分に9戸が入るが、現在のところあいにく2戸が空き室。広さは52.11m2の2DKで、契約家賃は57,000円。最も低所得の場合には49,700円で入居できる。夫婦入居と単身入居はだいたい半分ずつとのことだが、2DKという間取りは正直ちょっと中途半端という印象を受けた。もちろん緊急通報装置はつき安否確認も市が提供するものと民間事業者のもののいずれかを利用できる。また建物の南側には、小さいが菜園もある。
 1階に接骨院とデイサービスがあり、デイサービスの方に話を伺うことができた。この高優賃建設時に話があり、市内でも早い時期に開設したとのこと。テナントとして入居しており、入居者の利用者はかつてはいたが今はいない。しかし1階に入居していると管理人と間違えられ、緊急通報が鳴り響いていたときに、近所の方から声を掛けられたこともあったとか。入居者の方には、よかったらいつでも浴室の利用や施設に遊びに来てもらうよう声を掛けているととのことであり、何かあったときなどを考えると、こうした施設が1階にあることは本当に安心だ。
 入居状況などもよくご存じで、施設利用者や他のデイサービス事業者から紹介されて入居される方が多いとのこと。市役所で紹介を受けて入居されるケースも多いようで、住宅の管理は(株)ニッショーが行っているが、ニッショーの窓口に訪ねてくる高齢者はやはり少ないようだ。
 この住宅も環境や周辺施設の状況などもよく、とても快適な住宅だが、持ち家が多い住宅状況を考えれば、入居者は単身者に絞った方がよく、その点で間取りや広さがややミスマッチだったかもしれない。もっとも高齢者は荷物が多いという実態もあり、このあたりは難しい判断だと思う。