高齢者の住まい(阪神編)

(2005.10.27)



シニアハウス長居公園 / HAT神戸脇坂高層住宅


 10/27は大阪・神戸の高齢者向け居住施設と高齢者向けの情報提供を行っている神戸市「すまいるネット」を見学してきました。

シニアハウス長居公園
ひょうご復興コレクティブハウジング「HAT神戸脇坂高層住宅」
神戸市すまいの安心支援センター「すまいるネット」

■ シニアハウス長居公園

 大阪市営地下鉄御堂筋線・長居駅を出て、北側に長居陸上競技場(セレッソ大阪!)の銀色の屋根を見つつ歩くこと10分あまり。少し南に下ると、11棟の住棟が立ち並ぶサンヴァリエ東長居というUR都市機構の住宅団地があります。この一画に、シニアハウス長居公園はありました。周辺は大阪府営住宅や大阪市住宅供給公社住宅もあり、また民間マンションや密集した低層住宅なども建ち並ぶ住宅市街地でした。

シニアハウスの北側エントランス廻り / 近くの都市機構住宅 / 府営住宅
 シニアハウスとはいわゆる介護付き有料老人ホームで、1階に食堂と浴室、2・3階が介護居室(計17室)、4階に自立した方も入所できる居室が8室(うち4室は夫婦部屋)という構成です。また、クリニックと訪問介護事業所が1階にテナントとして入居しています。最初に浴室を見学した後、4階から順に見せていただきました。2005年4月オープンで、現在のところ約30室強が埋まっているとのことです。4階居室は28.24m2と50.65m2。ミニキッチンが付いています。また介護居室は21.62m2が標準で一部ミニキッチン付きの部屋もあります。4階は、エレベーター前にゆったりとした談話コーナーが取られています。また、2・3階は中央に浴室やスタッフルームなどが取られ、四周を居室が囲んでいますが、一部談話コーナーや食堂もあり、全体的に明るくゆったりした雰囲気です。
 利用料は、入居一時金が1,450〜2,300万円(一人入居)、月々の管理費・食費・水光熱費が169,020円。介護費用については介護ランクによって異なりますが、一律上乗せ介護金42,000円を加え、全体では176,589〜237,033円となっています。
 この施設の一番の特徴は、UR都市機構の住宅と連携していること。そもそもこの土地・建物自体が都市機構が所有し、(株)生活科学運営が賃借して運営しているのですが、このシニアハウスを囲むように建つ都市機構の賃貸住宅「ふれあいプラザ長居公園南」と「サンヴァリエ東長居15・16号棟」に居住する高齢者住戸20戸に対して生活支援サービスを提供するとともに、介護度3以上になった場合には優先入居できる仕組みとしています。ただし、契約料金はかなり高額で、毎日の安否確認サービス(施設からインターホンで話しかける)と緊急通報サービスがつく「ふれあいプラザ長居公園南」は契約金が1200万円と月々6万円。緊急通報サービスだけの「サンヴァリエ東長居15・16号棟」は900万円と月々6万円。ただし、シニアハウス側は万一のために常に4室は空室で確保しておく、という仕組みとしています。
 常に空き室を確保しておくという点が高額となってしまった要因でしょうが、それでもこのシステムが成り立つというのは、長年この団地に住み続けてきた高齢者にとっては、介護が必要になってもこの地域で暮らし続けたいという気持ちの故でしょうか。施設やサービスを買うというより、コミュニティを購入していると理解して良いのだと思います。高齢者にとって、地域のコミュニティがいかに重要かということを示していると言えるでしょう。
4階一人用居室 / 4階談話スペース
2階談話スペース / 2階食堂

■ ひょうご復興コレクティブハウジング「HAT神戸脇坂高層住宅」

 大阪を出て次に訪れたのは、兵庫県営のコレクティブハウスです。先日見学したかんかん森とは異なり、入居者を高齢者に限ったコレクティブハウスであり、震災後非常に注目を集めた住宅形式でもあります。
 阪神電鉄の春日野道駅を降り、歩くこと5分。巨大な住宅団地が見えてきました。この一帯は震災後、住宅市街地整備総合支援事業と土地区画整理事業の合併施行により、民間の工場跡地を開発したもので、東部新都心区域、通称「HAT神戸」。中央部に、業務、研究、文化、教育施設が集まり、東にHAT神戸・灘の浜、西にHAT神戸・脇の浜という、いずれも兵庫県営・神戸市営・都市機構住宅と福祉施設で構成される地区があり、各地区の南には摩耶シーサイドプレイス、神戸海岸通ハーバーフラッツという民間分譲住宅地区が広がっています。私たちは春日野道駅からHAT神戸・脇の浜のほぼ中央部に入り、西端の10号棟「脇坂高層住宅」へ向かいました。途中、特別養護老人ホームや地域福祉センターもあり、緑の多い気持ちのよい住宅地です。

HAT神戸・脇の浜の入り口付近 / 地域福祉センター / 特別養護老人ホーム

民間分譲住宅 / 手廻しポンプ / 脇浜高層住宅から東を振り返る
 現地では、兵庫県公営住宅課の方、県住宅供給公社の方、LSA(ライフサポートアドバイザー・生活援助員)の方、そして住宅地の自治会長さんにも立ち会っていただき、現況をお伺いすることができました。兵庫県では、震災後、仮設住宅での孤独死が取りざたされる中で、協働生活と空間を取り入れた地域仮設住宅が比較的うまく運営されていたことを踏まえ、北欧への視察なども経て、全部で7団地232戸のコレクティブ住宅を供給しました(他には神戸市営住宅が1団地29戸)。高齢被災者を対象とするということで、全てシルバーハウジング(LSAによる相談と緊急通報システム等が付帯した住宅)であり、協働生活がおくれる空間として共同ふれあい空間が設置されています。ただし、この共同空間の利用方法や住まい方のルールについては基本的に各住宅毎に入居者にまかせました。
 脇坂高層住宅はRC造3階建て44戸で、各階入り口部で土足から履き替え、奇数階にキッチンの付いたふれあい空間(2階吹き抜け)と共同トイレ、偶数階に談話コーナー、各階に洗濯コーナーが設置されています。入居時に復興基金から1ヶ所当たり20万円の補助が出て、これで家具などは整え、入居当初はイベントなども頻繁に行われたようですが、次第に住民全体で集まることはなくなり、今は住宅内にいくつかできた趣味のグループがもっぱら利用しているとのことでした。また、当初はまだしも、あとから入居してきた者の中には、コレクティブの趣旨を理解せず共益費などを払わない者も出てきたということです。この点は、基本的に資質などで入居者の選択ができず、また管理戸数も多いことから、きめ細かい住宅毎の生活指導ができかねるなど、公共住宅ゆえの要因があるとおっしゃっていました。
共同ふれあい空間

洗濯コーナーは利用されていない / 下足箱 / 住戸内
 震災後という非常に特殊な環境の中でこそ、助け合い暮らすという居住の仕組みが成立したけれど、いざ普段の生活に戻ってみれば、協働の生活を楽しめるという特別なメンタリティを持つ人でないと成立しない仕組みを、誰でもが入れる(しかも低家賃故に入居希望者が殺到する)公共住宅に持ち込んでしまったのは、やはり無理があったと言わざるを得ないのではないでしょうか。
 コレクティブハウスができた当初は、コレクティブ応援団の活躍が期待されましたが、この点について聞いたところ、外からボランティアではいる人と実際に生活している人との意識のギャップがあって、結局うまくいかなかったとおっしゃっていました。例えば、ボランティアの方たちはイベントを通じてのコミュニティづくりを進めようとするけれど、住んでいる者としては地域の一斉清掃への参加などもあり、どうせボランティアで来るなら代わりに掃除をしてほしい、といった声もあったそうです。コミュニティというのは無理につくるものではなく、自然とできていくものだということは、サンコート砂田橋でも聞かれたことですが、改めて実感しました。もちろんそのための場や機会を準備しておくということは必要なことですが、無理強いしてはいけないということです。

■ 神戸市すまいの安心支援センター「すまいるネット」

 最後に、三宮からほど近いところにある、神戸市すまいの安心支援センター「すまいるネット」へ行きました。ここは神戸市が運営を神戸市住宅供給公社に委託して設置している施設で、常時4名の専門家(建築、消費生活、資金)がいて一般相談に対応するとともに、セミナーの開催や専門相談(弁護士など)、専門家派遣(マンション管理組合へのアドバイザー派遣など)、業者選定支援などを行っています。またライブラリーコーナーやパソコンコーナーで自由に住まいに関する情報探しができるとともに、市営・県営・民間住宅の物件情報カウンターもあります。
 この施設自体は平成12年にオープンしていますが、この2月から高齢者向けの住宅・施設情報の提供と相談業務を開始しました。紹介する住宅・施設は、高優賃や高齢者円滑入居住宅、公共住宅に加え、福祉部局と連携して老人ホームや福祉施設等の紹介もしています。この事業を実施するにあたっては、5日間にわたる相談員養成講座を実施するなど、周到な準備をしてきていることが注目されます。また、一般相談も含めて、業務終了後1時間をかけて、相談員から公社職員が相談内容の聞き取りを行い、これを記録・整理することで、相談レベルのグレードアップを図っているそうです。
 運営費は100%神戸市負担ということですので、財政部局や首長の英断がないとなかなか容易には取り組むことはできないとは思いますが、よい施設があって神戸市民はいいなあと感じました。