栗と北斎とまちづくり
小布施

(2004.7.27)


桝一市村酒造場本店

 ひょんなことで、初めて小布施の町を歩いた。まちづくり分野では、西の湯布院に並ぶ成功例と賞される小布施の町だが、今までなかなか立ち寄る機会がなかった。今回、急に志賀高原へ日帰りで行くことになった帰りに立ち寄ったもので、その点では原因者(娘)に感謝。でもできれば宿泊してのんびり信州の夏を楽しみたかった・・・。
 カーナビに導かれるまま小布施の町に近づいたが、その景観に特別なものを感じることもなく、中町南交差点で左折。若干道に迷ったものの、北斎館南の町営東町駐車場へ車を止め、北斎館などに囲まれた小布施堂テラス・笹庭界隈に足を踏み入れる。広々とした空間に風が渡り、木々や草花がそよぐ様は気持ちがいい。

北斎館 / 北斎亭 / 傘風楼
 まずは北斎館に入館する。映像展示なども含めじっくり楽しむ。北斎の肉筆画や屋台絵がすばらしい。ひととき楽しんだ後、栗の小径をたどって高井鴻山記念館に裏口から入る。ここでも一弦琴を弾いて楽しむなどのんびり。2階和室の畳に座り、向かいの栗菓子工房・傘風舎の越屋根のある瓦と緑の美しい風景を満喫。

栗の小径 / 高井鴻山記念館
 続いて栗の小径をたどると、景観に配慮した美しい邸宅。茅葺き屋根を葺いていたのはどういう施設をつくっていたのか。シャトルバスの広々としたバス停を通り、おぶせミュージアム・中島千波館まで。現代日本画家の第一人者・中島千波氏の様々な作品が静かな環境で楽しめるのも一興。ついつい足助と比較してしまうと、こうした現代的な文化も内蔵している点が小布施の強みかと思う。古さと歴史だけではない、現代的なおしゃれさが感じられる。

おぶせミュージアム・中島千波館

栗の小径沿いの邸宅 / 傘風舎東棟
 かなり歩いて疲れた。同じ道を歩いて戻る。「Welcome to My Garden」という看板が。ずうずうしくも勝手にお庭を拝見させてもらうが、こうした活動も面白い。小布施堂テラスまで戻って、傘風楼で食事。こぎれいで美味。あたりもようやく薄暗くなってきた。帰途に着く前に国道沿いも見ておこうと少し足を伸ばしたつもりが、なんとこちらこそが表玄関じゃないか。国道403号線、通称・谷街道沿いに桝一市村酒造場本店、正門、小布施堂本店が並び、町並みに合わせた景観の銀行の間に、小布施の環境整備事業の始まりの場所、幟の広場が。地域に開放された空間・銀杏模様の路面、雁行し囲む形状の木造建物群。確かに空間的に面白い。が、現在は専用駐車場となっており、開放性という点では小布施テラス界隈の方が優れる。景観的にも。

幟の広場

正門
 それよりも国道沿いの町並みの方がすばらしい。もっとも向かい側の日本のあかり美術館や和菓子店などは小布施堂ほどの風格は感じさせず、一般の古い町並みといった感じ。このあたり、小布施堂のデザインが一抜けている。確かに地域への波及効果、小布施町発展の契機としての位置付けも大きいのだろうが、小布施堂そのものの良さ、建築的には宮本忠長の仕事の良さが際立っている印象だ。他の建物も、この地域独特のうす茶色土壁の色彩が、特段のデザインを要求せずとも地域におだやかになじむという点が町並み形成上有利に働いているが、景観まちづくりとしてどこまで評価してよいのかは疑問。とにかく小布施堂が独走している感じ。

小布施堂本店 / 蔵部

白銀のカブトムシの像と民芸店「自在屋」 / 桝一市村酒造場本店
 帰りに、隣接する蔵の町・須坂の町中を通っていった。数年前に開かれた町並み保存連盟の町並みゼミに友人が参加していたが、想像以上にすぐれた町並みが続いており、びっくり。次回は是非歩いてみたい町だ。