京町家を生かした
まちづくり

(2002/ 1/22)

●町家倶楽部
●西陣町家散策
●まちづくり憲章
●京まち工房
●京町家「繭」
セカンドハウス東洞院

 常滑の仲間たちと、京都の様々なまちづくりの調査に行って来ました。京都といえば窓格子が美しい京町家が並ぶ町並みが特徴ですが、一方で市電や琵琶湖疎水で代表されるように、非常に進取の気風に富んだ土地柄でもあります。京町家をアーティストの入居を仲介することで生かし再生する町家倶楽部。マンション建設に対する反対運動の結果登場した各地のまちづくり憲章。そして町家の活用事例。今の京都のまちづくりの様子をレポートします。

●町家倶楽部    ○対応:佐野さん、小針さん、萩原さん

(町家の仲人)
  • 最近、町家がブームになってきているが、佐野さんが、京都の町家に祀られる布袋さん、屋根の上に乗る鍾馗様に興味を持ったことが契機となり、小針氏に西陣移住を誘ったところ、100軒の空家を見つけてきた。このうちの一つに1995年に住み始めたのが始まり。その後、現在までアーティスト等を中心に約70件のお見合いが成立し入居されている。
  • 町家倶楽部の活動はあくまでお見合いで、両者が会って、大家が気に入れば契約に至る。基本的に大家が選ぶ仕組みになっている。
  • 西陣は、大きな織屋さんがもともと分散して所有していた町家=工場に職工さんを住まわせ仕事をさせていた地域で、地場産業の衰退とともに、これらの工場が操業を中止し、倉庫として利用されてきた。賃貸すれば契約上のトラブルが懸念されるし、そもそも路地裏の長屋は借り手もいない、ということで放置されてきた。
  • 町家倶楽部と同様のことを行政がやるとなると、審査基準や所得制限等、平等性が問われるし、時間的にもついてこられないだろう。また不動産業などの民間資本も最近は多く進出してきているが、こうした個性的で人間関係の豊かな地域で営業するのはけっこう難しいのではないか。
  • 町家の改修に対する行政の補助制度もなく、セルフビルドで修繕したりしている。こうした中で、大工さんや建築家とのネットワークもできてきている。
  • 行政は例えば1軒に3,000万円かけて良いものを造ろうとするが、10軒に300万円づつ分けた方がよっぽど地域への効果は高い。こうしたことを考えてほしい。
  • 町家の賃貸に関わるトラブルに対しては、結婚の仲人と同じ立場で関わるようにしている。すなわち、契約の方法やルールを教え、トラブルになったら相談には入るが、最後は両者で決定してもらう。ただし、今までもめた事例はない。
  • 町家倶楽部には規約もないし、会員もない、定例会もない。3〜4人の仲間(+ボランティア60名、入居者・アーティスト70名)で好きなようにやってきた。だからいつやめるかもしれないし、活動の方向が変わるかもしれない。経費は視察の協力金や町家仲人時に大家さんからいただく協力金、最近は京都府や市から委託事業を受けることもある。
(地域の活性化とまちづくり活動)
  • もともとまちづくりをめざした活動ではなかったが、新住民と旧住民の橋渡しをすることで、コミュニティの再構築につながり、自然にまちづくり活動となっている。
  • 地域のトラブルはあって当たり前。なければコミュニティは活性化しない。例えば町家の借り手が開いて店の前に違法駐車がある。これを排除するのでなく、おれの店の客にしてやろうと考えることで、地域で駐車場を造ろうという活動につながる。
  • 空家の活用をカネという視点で取り組むと、いかに資産を活用するか、その資産でどれだけの利潤をあげるかというテナント論理でまちが造られ、結果まちが荒らされる結果となる。我々は人をつなげるという視点で取り組んでおり、あくまで家賃であるので赤字で当たり前。
  • 町家を活用して定住を促進しようとも考えていない。「出たい奴は出てもらえ。来たい奴は来るで」と言っている。来たくて入ってくる人は頭を下げて入ってくる。仲人活動のベースはあくまで大家側にあると考えている。
  • しかし70件の家賃と修繕による経済効果を見積もると、年間1億円近くにはなるはずで、経済的な地域活性化への効果も大きいはず。

(活動のひろがり)
  • ニューヨークに在住している方とのE-Mailから、アーティストによるまちづくりを進めているピークスキル市を訪れ、交流が始まった。またその際、SOHO地区も訪れたが、行政主導のピークスキル市、不法占拠で始まったSOHO地区。西陣ではそのどちらとも違うアーティストによるまちづくりが始まっている。
  • 活動の中で大事にしているのはマスコミ。時にはまちがったことが書かれることもあるが、周知してもらうことで活動助成につながったこともある。
  • 町家倶楽部の活動が核となって、町家体験施設「エコハウス町家プロジェクト」や西陣・わらやちょう町家塾「ケメコはうす」、西陣活性化実顕地をつくる会(ネットワーク西陣)、町家倶楽部ネットワーク等の活動にひろがっている。(たぶん?活動の広がりと組織は不分明です。確かなのは、これらの活動の核に佐野さんと小針さんがいるということ。)

●西陣町家散策


手焼きせんべい「宗禅」 / 喫茶・雑貨「西陣りらくあん」 / 蕎麦屋「かね井

わらび餅「茶洛」

舞妓変身「華憧」骨董「龍華堂」写真「小針」

織成館 / 現代的デザインの格子と地蔵

●まちづくり憲章    ○対応:小伊藤さん(企業組合もえぎ設計)

  • 京都のまちなか、御池通から五条通、堀川通から河原町通に挟まれた地域は、「田の字地区」と呼ばれ、沿道は容積率700%建坪率80%、内部も容積率400%建坪率80%となっており、バブル期にマンション建設が盛んに行われようとしていた。
  • 京都の「まちづくり憲章」の活動は、バブルまっただ中の1988年に、マンション建設反対運動から始まった。当時、京都市は開発指向にあり総合設計制度の導入などに取り組んでいたため、「自分たちのまちは自分たちで守るしかない」と住民自身が立ち上がった。
  • 第1号は、「東山・白川堤町」地区。その後、現在までに35を越える地区で、まちづくり憲章が制定されている。
  • 内容は、地域の歴史から書き起こした前文に、4〜5条の簡単な条文がつくもの。住民主体の宣言と高さ制限が共通事項。後は適宜、精神的な景観保全の規定やワンルーム・マンション規制などが付け加わっている。色彩等は規定されていない。建築協定や地区計画まで締結・決定されたものは少ない。中には、京都市が都市計画変更に動いた地区もある。高さは「中京・百足屋町」で鉾の高さ18mに制限されているものが面白い。
  • 1地区の大きさは、町割りに合わせて、120m×120mか、60m×120mで、50〜60世帯である。
  • 決定の手続きは、全戸に配って意見照会をした後、町内会や町並みを守る会で、拍手で採択するケースが多い。起草・決定にあたっては、大学や弁護士、建築家(新建築技術者集団)が支援した。
  • 現在は、「京のまちづくり連絡会」という組織がつくられ、会報を発行し、とりまとめている。
  • 年別に見ると、以下のとおりで、次第に減っているが、依然年1〜2地区では決定されており、それなりの評価を受けているものと思われる。最近は、福祉のまちづくりや景観、文化、防災などを条文に入れる地区も多い。
    88年89年90年91年92年93年94年95年96年97年98年99年


●京まち工房(京都市景観・まちづくりセンター)

 突然の訪問だったため、特だった対応をしてもらえなかったが、次のパンフレットと報告書をいただいた。なお、元龍池小学校内に入居しており雰囲気はあるが、特別な展示スペース等はない。
  • 「(財)京都市景観・まちづくりセンター」のパンフレットとニュースレター
  • 次代に引き継ぐ京町家なんでも相談
  • 京町家再生プラン―くらし・空間・まち―

●京町家「繭」    ○対応:西村さん

  • 京友禅の染め物を生業としてきたが、全国各地の商業活性化の取組を見学した結果、京町家を再生し「繭」をオープンした。
  • 通りに面した部分には、家具・雑貨・イージーオーダーブティック・カフェ・ギャラリー等のテナントが入り、きれいな坪庭の奥に、染色体験ができる工房を開設している。
  • 体験工房は旅行会社を通じ広くPRをした結果、全国の修学旅行生に多く利用していただいている。

●セカンドハウス東洞院

 京町家再生研究会の支援により、呉服商家をカフェ・ギャラリー・レストランに改修・再生した。


京町家「繭」 / セカンドハウス東洞院