茅野市民館

+高遠

● 2007.7.29〜30 ●


図書館を外部から眺める

 このところ恒例になっている夏の車山高原行の帰り道、今年の建築学会賞を受賞して話題の茅野市民館へ寄ってきた。駅の北側から近づくと、白い縞模様の外観と伸び伸びとした芝生に面して輝く大きなガラス面が目に付いた。正面入り口左側に、中庭に面して緑が青々とした駐車場がある。そこに車を止めると、ゲート状デッキが視線を奪う。ゲートの向こう側に駅前広場。駐車場に隣接する中庭の芝生はよく手入れがされ、その向こうの図書室が透明なガラスを通して、人の動きまでよく見える。あっちにこっちに、どちらを見ても楽しい。
 駅前広場に移って改めて眺めてみる。必ずしもこちらが正面ではないはずだが、ゲート状デッキが自然な動線を誘う。ゲート下はイベントスペース。何もない空間だが、周りは明るく気持ちいい。
 駅につながるデッキをくぐって線路側に行ってみる。線路に沿って植栽とガラス面が気持ちいい空間を作っている。
 デッキに上がる。市民館のドアをくぐるとそこはもう図書館。下りのスロープに沿って右側に低い位置で書庫が並び、ガラス壁に面して閲覧用の机とイスが並んでいる。蔵書は少なそうだが、明るくて気持ちよさそう。通勤帰りなどにフラッと寄れるこんな場所があったら本当にうれしい。ちなみに、茅野市にはちゃんとした図書館が他に立地しているので、ここはあくまで分室です。
 スロープを下っていくと、噂のトイレ! 楕円形のスモークガラスで囲まれたブースは、男性、女性の大きなサインがなければ何のためのスペースかわからない。一瞬、CD等の視聴室かと思った。内部は駅構内にありがちな機能的な造り。
 スロープを降りきった平面がマルチホール前のロビー。マルチホールは、1・2階合わせて780席というからそんなに大きなホールではない。あいにく休みで見られませんでしたが、HPなどを見るとなかなか快適そう。ロビーから振り返ると広々とした中庭が広がる。明るい。右側正面はギャラリー。この日は「浜昌平作品展」をやっていた。
 中庭に沿って右に折れると奥にレストラン。その右手にコンサートホールへ上がる回り階段。左手に事務室。事務室とレストランの間に・・・正面玄関! つや消しの鋼板の扉が2枚。内側からは一体何か最初わからなかった。自動ドアが開くと、床に縞模様で照明が仕込まれ、イベント案内が流れるサインも仕込まれている。外に出ると、スリットがうねる白い外壁が視線を優しく受け止め、その下にガラス張りのギャラリーの壁面と伸び伸びとしたポケットパークが広がっている。主張はしないが自然に誘い込むようなエントランスだ。
 この建物は、倉田直道(工学院大学教授)のアドバイザーの下、1999年に市民23名からなる「茅野市の地域文化を創る会」により基本構想の検討が始まり、2001年にプロポーザル方式により古谷誠章を代表とするNASCAを選定、設計が始まった。しかし、単に一設計者に設計を委せるのではなく、市民35名からなる基本計画策定委員会が発足し、4つの分科会に分かれて議論を重ね、プロポーザル段階からかなり計画が変更になったとのこと。またその後は管理運営計画委員会が設立され、完成後の管理運営に向けた検討や、その過程から出てきた設計への細かい注文も出されたということで、徹底的な市民参加による施設づくりが実践された。このあたりの経緯は、「地域と協働して人々の交流の駅をつくる」に詳しい。
 この施設の管理運営は指定管理者制度に基づき、新たに設立された株式会社「地域文化創造」が運営を担当。2005年10月にオープンして現在に至っている。
 茅野市といえば蓼科高原には数多くの美術館や博物館が目白押しだが、市民の足である駅前にもこんな素晴らしい施設がある。うらやましい限りだ。

 おまけに、今回の旅行の行きに立ち寄った高遠の町並みを紹介しておこう。高遠は今、NHK大河ドラマ「風林火山」の山本勘助・由布姫ゆかりの地ということで、桜のシーズン以外の観光客も増えているようだ。城址公園に至る街道は、商店街のこれまでの景観整備の努力の成果か、伝統的な景観を装った商店が建ち並んで独特の景観をなしている。そのほとんどは新しいものだが、なかには古い蔵や商家も散見される。民俗資料館「旧池下家」に寄ったが、あいにく臨時休館。外観だけ見て、足早に先を急いだ。
民俗資料館「旧池下家」