正則関数のところで説明していますが、
関数f(z)が閉路Cに囲まれた領域内で正則なとき、
が成り立ちます。
別の見方をすると、任意の関数f(z)に対して、
任意の閉路C上での積分は、
関数f(z)の正則でない点が閉路Cに囲まれているかどうかだけで決まります。
例えば、f(z) = はz=0以外で正則なので、
∮dzの値は、
Cがz=0を囲むか囲まないかだけで決まります。
そのため、このような積分は計算の容易な経路を適当に選んで計算してやればいいわけです。
例として、∮dzの値を計算してみましょう。
積分経路として、C={z | |z|=r}(rは任意の正の実数)を選んでやると、
z=r eiθ, 0≦θ≦2πとなりますから、
となり、したがって、
∮dz =
{| 0 | (Cがz=0を囲まないとき) |
| 2πi | (Cがz=0を囲むとき) |
となります。
関数fに対してf(z)=0が成り立っているとき、aをfの零点(zero, zero point)といいます。
このとき、=0となる最大の自然数kをfの零点aでの位数といいます。
同様に、関数fに対して=0が成り立っているとき、bをfの極(pole)といいます。
このとき、=0となる最大の自然数kをfの極bでの位数といいます。
すなわち、の零点をfの極といい、の零点の位数をfの極の位数といいます。
また、位数がNである零点を「N位の零点」といい、
位数がNである極を「N位の極」といいます。
べき級数展開や留数の話をする前に、∮zndz(Cは原点を囲む閉路で、nは整数)の計算結果を知っていると留数を理解しやすくなりますので、まずこのことについて述べます。
nが0以上の時には、znはすべての複素数zに対して正則なので、閉路上での積分の値は常に0になります。
また、n=−1の時の結果は先ほど求めたように、2πiになります。
それでは残る∮dz(n≧2)の場合を考えてみましょう。
先ほどと同じように、積分経路としてC={z | |z|=r}(rは任意の正の実数)を選んでやると、
となります。
ここで、この積分の値はrの値によらず一定なわけですから、r → ∞としてもこの積分の値は変わりません。
n≧2ですから、このとき → 0となります。
したがって、
となります。
すなわち、n ≦ -2 のとき、
原点を囲む閉路上での zn の積分は 0 になります。
以上の結果をまとめると、
となります。
また、今までは簡素化のため、原点を囲む閉路に限定して考えてきましたが、
任意の閉路について考えるために、
zをz−ζに置き換えます。
その結果、変数変換の公式から直ちに、
という式が得られます。
ただし、 Cはζを囲む任意の経路です。
∮(z−ζ)ndzの値を計算するのと同じ方法
(z = r eiθ と置いて置換積分)
で、
fが領域0<|z−ζ|<R上で正則であるとき、
0<r<Rである任意の実数rに対して、
という式が得られます。
(前節までの説明とは、z と ζ の位置が逆なので注意。)
また、この式をzに関して n 階微分することで
という式が得られます。
ただし、f(n)はfをn階微分したものです。
ところで、複素関数fは、正則なz=ζの周りでテイラー展開
が行えます。
この式に、f(n)(z) = ∮dζを代入すると、
となります。
n 階微分
f(n)(ζ)は、f(z)がz=ζで正則なときにしか定義できませんでしたが、このanならf(z)がz=ζで正則でなくても、z=ζの近傍で正則(このような点を孤立特異点といいます)なら定義することができます。
そこで、テーラー展開を拡張して、
としたものをローラン展開(Laurent expansion、ローランは人名)といいます。
ただし、rはfが0<|z−ζ|<Rで正則となるような実数Rに対して、0<r<Rとなる任意の実数です。
ローラン展開は、fの正則点ではテーラー展開と一致します。また、z=ζがfのN位の極であるとき、n≦−Nならばan=0となります。
(ここではローラン級数の収束性や一意性について厳密な話は取り扱いません。詳しくは教科書などをご覧ください。)
fが領域0<|z−ζ|<R上で正則であるとき、
0<r<Rとなる任意の実数rに対して、
の値をfのz=ζにおける留数といい、
Res[f,ζ]と書きます。
留数は、
点 ζ 上を除いて正則な関数の、閉路上での積分ですから、
点 ζ で非正則な場合(すなわち、極である場合)にのみ 0 でない値になります。
また、fの任意の閉路C上での積分の値は、留数を用いて
と表すことができます。
ただし、
ζiは閉路Cに囲まれた領域内にあるfの極です。
この式から、
閉路中の全ての極における留数を調べることで、
任意の閉路上の積分の値を求めることが出来ます。
留数の求め方について考える前に、留数とローラン展開の関係について触れて起きます。
ローラン展開の係数の式と、留数の定義式を比べれば即座に分かりますが、
留数はローラン展開の−1次の項の係数に一致します。
(前節で述べた式に n = -1 を代入すると、分母が消えて留数の定義式に一致します。)
すなわち、fが
とローラン展開できるとき、
Res[f,ζ] = a−1
が成り立ちます。
また、点 ζ が複素関数 f の N 位の極であるとき、
f のローラン係数 an は n < -N である全ての n に対して 0 になります。
すなわち、f のローラン展開は以下のようになります。
(Σ の範囲に注意。)
ここで、まずこのfに(z-ζ)Nをかけてやると、
となり、さらにこれをN−1階微分してやると、
()N−1(z-ζ)Nf(z) = an−1(z-ζ)n
となります。ここで、z → ζ の極限を取ると、n=0の項だけが残るので、
()N−1(z-ζ)Nf(z) = (N−1)!a−1
が得られます。
Res[f,ζ] = a−1ですから、結局、N位の極ζでのfの留数は
Res[f,ζ] = ()N−1(z-ζ)Nf(z)
によって求めることができます。