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卯月
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鶯の樹の間に透ける森の朝 板前の下駄の干しある春の昼
石舞台千古のままに黄砂舞ふ 花冷や整備を急ぐ工事音
見得を切る台詞ふのどけし稚児歌舞伎 花冷えや風に洗はる石畳
梅一樹峡の光をあつめをり かしましく齢秘しあふ万愚節
シーソーの片端跳ねて風光る 少年の除く銃眼風光る
玉砂利を蹴散らす神事うららかに ギャラリーに人と待ち会ふ春の昼
春昼や子供歌舞伎の長台詞 春昼や路地裏ふさぐ立ち話
皐月
流鏑馬の一矢をはづす風若葉 渓流に釣り人立ちて夏めける
葉桜の影へと歩む立ち話 蹴鞠場にきらめく烏帽子聖五月
ひざまづき芝生の手入れ庭薄暑 風若葉空き家の庭へ潜みけり
カーテンに影をくねらす夏の蝶 珈琲の香り広げる薔薇の風ひ
幾重にも薄暑重ねる棚田かな 食卓も衣代へたり旬の味
どくだみや宿無し猫の通りゆき 花菜風舟こぐ軋み運びけり
花の川京の真中を貫けり 鳶舞うて夏めく空を傾げたる
水無月
馥郁と風の抜け来る薔薇の門 ででむしやはにかみ隠す深帽子
香煙の渦の崩るる薔薇の風 停車場に太鼓の響く麦の秋
菖蒲田の水面に映る風の影 腰痛の湿布再び梅雨に入る
足跡にさざ波生るる植田かな 夏草の風に濃淡ありにけり
庭石の影を乱しつ実梅落つ どくだみの匂ひ引き抜く庭手入れ
雨垂れの音の重なる額の花 少年の広めの鍔の夏帽子
里若葉雲を映してゐる水田 紅白に結ひし祝の荷梅雨晴れ間