しあわせの風景 Vol.6

 

 

 

 

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    〜ブタの生きがい〜

 震災のときに、小学生くらいの子供たちが電車の運転士さんに向かって「一生懸命、電車を動かしてくれてありがとう」と言うと、その運転士さんは泣いてた、という話を聞いた。
感動的な話であるが、もう少し掘り下げたい。
 人は自分の仕事のありがたさというか、社会とのつながりの中でどんな役に立っているのか、ふだん気づかない。ともすれば、愚痴の出る毎日なんてことも。私達はこんなことでも無いと気づかない。何と大きな犠牲!

 「生きがいとは?」とか、「自分探し」と言って私達は悶々と悩むが、案外そうしたことは身近にありそうだ。

 身近にありながら、気づかない。気づかないからこそ、毎日を真剣に生きたい。毎日の中のその一瞬、一瞬を真剣に生きる。それが一所懸命。そしてその一瞬、一瞬をつなげて、一生懸命となる。一所懸命はすなわち一生懸命。考えてみると、それしかできない。天変地異は人間の裁量ではないのだから。

 「人事を尽くして天命を待つ」そうしているうちに気付くかも知れない、「生きがい」というものに。

 震災では人間ばかりではなく、犬や牛など動物たちも被災している。彼らはけなげである。何の恨みごとも言わず、ひたすら飼い主を待っている。彼らの生きがいは飼い主への愛情なのではないだろうか。

 「ベイブ」という映画の中では、主人公のブタが「食べられるために、生きている」ことを知る。ベイブは牧羊犬ならぬ牧羊豚をめざすのだが、大多数のブタは「生きがい」など持たないだろう。それでも、彼らは彼らなりに毎日を一生懸命に生きている。