私がディンギーに乗っていた当時は、シーホッパー(Y-14)をカートップにして野尻湖や浜名湖によく行きました。その後スループ艇(YS-15)に乗り換えた当時、レースや遊びに行くのも、トラックを借りて積み込む事が負担になってきたので、船台として使い易く所有艇の形状にあったトレーラーを製作しました。それが約15年前の事で、その後トレーラーは会社の隅で朽ち果てていくままでした。

家庭を持ち子供が生まれると、いわゆる家族サービスからは逃れられませんが、3人の子供もだんだん手がかからなくなった今、青い海やヨットを見るたびに無性に乗りたくなりました。そこへ久しぶりに昔のクルーからの電話があり、つい「また乗ろうぜ!」の言葉が出てしまい、手始めにシングルハンド艇(Y-14)から再開しようと考えましたが、いずれダブルハンド艇(YS-15)に乗りたくなるのが人情です。しかしYS-15は全長4.7mなのでカートップでは無理があります。そこで先ほど紹介したトレーラーの残骸の再利用を思い、情報収集するうちに無車検トレーラーの危険性を知り、トレーラー車検取得を決意しました。
当初は車軸関係を直せば十分使用出来る考えたのですが、何しろ15年前はおおらかな時代で灯火類も無く、無車検無保険で走っていました。今考えると恐ろしく無謀な話ですが、名古屋から高松まで、レースの為牽引した事もあります。しかしネットで検索したところ、 高木茂さんのHP を読むうちに、無車検無保険ボートトレーラーは、取り返しの付かない事になると思いました。それからは、他のHPも含めてとにかく情報収集をしました。手始めに中部運輸局に電話を掛けてみたところ、担当者の松井さんがとても親切にアドバイスを下さり、その場で31ページもの 資料 をFAXで送って頂き感謝感激しました。
早速送って頂いた資料を見ると、見慣れない計算式や用語に圧倒され、こんなの出来るかなと自信が無くなりました。私の場合は市販車や輸入車と違い、ゼロから書類を作成する必要があり、現存するのは灯火類も付いて無いA型フレーム(SUS304)と車軸パイプ(SUS304)のみ。タイヤとスチールホイールはぼろぼろ。まず現存するパーツを 3DCAD でモデリングし、スペックをデジタルモックアップで検討しました。保安基準を満たす為、車軸周辺から2本の角パイプを伸ばし、灯火類を取り付けたパイプを載せました。ナンバープレート、キールローラーもここに配置し、これらを600mm伸縮可能としました。
昼休みと一部休日だけの作業な上、加工誤差、設計ミス等で結構手こずりました。設計で一番困ったのは、YS-15(4.7m)を載せた状態での艇体のはみ出しです。牽引車とトレーラーの連結状態で、全体長の10%までが許容範囲なので、リアオーバーハング1232mmとし、フレームを伸縮させる構造としました。Y-14(4.2m)を積載する場合長すぎるのと、空車牽引時や取り回しを考慮した為です。この時点で担当は松井さんから田中さんへ変わっていましたが、親切に相談にのって頂きました。書類もほぼ完成しましたが、フェンダーとテールパイプ間の巻込防止と、ワイヤーブレーキ端の固定を指導されました。
駐車ブレーキは、ホイールの穴にワイヤーを通す構造です。注意点はワイヤー直径6mm以上、片側を車体に強固に固定の2点です。当初は両端共にシャックルで留めていたので、指摘を受けた時点で片側を固定しました。車両検査時には牽引車で牽き、ロックされる必要があります。さらにワイヤー表面の保護も必要なようでした。このタイプの駐車ブレーキは、北海道での無車検トレーラーの死亡事故をきっかけに、今では全国の運輸局で認められたそうです。この方式が認められなければ、駐車ブレーキもかなり苦労したはずですから、北海道の先駆者の方々の努力には頭が下がります。
巻込防止措置ですが、フレームが伸縮する構造でもあり、とりあえずパイプを斜めに渡す図面で書類を提出しました。つまりその時点では、トレーラーは未完成だったわけです。その後写真の構造を考えて、提出した図面とは違う物となりました。そこで車両検査受検日を予約し、念の為運輸局に確認FAXを送ったところ、やはり車検が通らない可能性が高いと言われました。そこで紹介された検査官の方に、事情を説明しFAXを送りました。400mm以上の間隔は、歩行者等を傷つけない構造で巻込防止措置が必要だが、車体に強固に固定されていれば、写真の構造でも大丈夫との事でした。
出入りの車屋さんで自賠責保険に加入し、自動車臨時運行許可証も、会社近くの市役所税務課で取得しました。注意点は自賠責保険証明書を提示する事、有効期間が5日間で使用後7日以内に返却する事です。最近では役所の対応も良くなったようです。同時期に車庫証明も警察署で取得したのですが、代理で窓口に行った妻は、凄く感じが悪かったと言っていました。仮ナンバーを付けての走行も初めてですが、会社から自宅までのトレーラー運転も15年ぶりで緊張しました。印鑑証明と実印も準備したし、テレフォンサービスで車検日も予約したので、後は車検当日を待つばかりです。
車検当日は早めに到着したのですが、ラインに車が並んでいるので、とりあえず自分も最後尾に付きました。ここで受付する事を忘れ、書類をどうしようと考えるうち車列が進み、結局予定のラウンドは諦めました。各種書類は大体自分で書き、一部面倒な点は代書屋さんへ頼みました。あと自作なので製作証明書が必要でした。車両検査は問題無かったですが、測定コースでは、フェンダーの傾きでホイールが車幅からはみ出す問題を修正しました。職権打刻は自分で打ちますが、力が必要で緊張しました。さらにテープと赤鉛筆で拓本を2枚写し書類に貼ります。結局一日掛けて、ナンバーを取得出来ました。
こうして何とか完成したトレーラーですが、私が 車検登録出来た第1の要因は、ネットで 高木茂さんのHP を発見した事です。このHPの情報が無ければ、そもそも車検を取るという行動も起こさなかったと思います。その結果起こり得る事態を想像すると、恐ろしくなります。第2に15年前に良い材質(SUS304)でトレーラーを製作していた事です。保安基準に適合させる為、灯火類や連結部分の追加で済みました。第3に会社で3DCADを使出用来る事と、部品の加工の手配が可能だった事です。そして第4に私が暇人であり、書類や製作に時間を割けた事もあります。最後に、提出した 書類一式 (画像で重い)です。

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