脱ダム宣言

脱ダム宣言  ダムの問題点  ダムとは  アメリカでの脱ダム 高まる川辺川ダム反対運動

生態系破壊聞われる河口ぜき  「河川はんらん」前提の治水対策を   問題となった主な計画

河川環境と共生した治水の時代に   ダムに代わる治水策

長野県知事の「脱ダム宣言」

 長野県の田中康夫知事は2001年2月20目、ダムは地球環境に多大な影響を与えるなど問題があるとして、「脱ダム」宣言を行い、本体着工していない下諏訪ダム(下諏訪町)など7つの県営ダムの建設中止を決めた。

 田中知事は宣言で「日本の背骨に位置し、数多くの水源を擁する長野県においてはできる限り、コンクリートのダムを造るべきではない」と強調。下諏訪ダムの治水の代替案として、「河川拡幅を基本に堤防のかさ上げ案や掘り下げ案、遊水地案などを複合的に組み合わせる」としている。

 2月定例県議会では、下諏訪ダムの中止決定が大きな争点となった。共産党を除く県会3会派が、ダムを含めた総合的な治水を考えるダム検討委員会設置条例案を提案し可決されるなど、田中知事への対抗姿勢を強めている。

→→ 田中知事に対抗する議員たちは、なぜそんなにまでして反対しなければならないのでしょうか。ゼネコンからの企業献金や選挙援助などへの見返りに、仕事を作ってあげなければいけないからとしか、浅学な私には思いつきません。
 長い目で見たらどう考えてもダムや堰は人類生存の妨げとなることがわかっているのに。

 田中知事はちょっと変わり者かもしれませんが、なんの汚れもなく政治家になられたわけですから、ゼネコンなどへのご恩と奉公の必要がないんですよね。そういうクリーンな政治家だから、理念を実行できるのでしょう。かって青島さんも同じような正義感を持って知事になられたんだと思うんですが、青島さんは優しすぎる性格が災いして、いじわる議員の攻撃に負けてしまいました。
 田中知事への期待大です。負けるな、田中さん。そして、ありがとう。


ダムの問題点   

1.自然破壊
 ダムは河川の生態系を分断するなど、環境に与える影響が大きい。財団法人・日本自然保護協会は2000年9月、国土交通省が多目的ダムを建設中の熊本県の球磨(くま)川水系川辺川でアユの魚体調査を行った。調査によると、ダムのない川辺川のアユは球磨川本流など周辺のダムのある河川のアユよりも一回り大きいことが判明した。川辺川ダム完成後は1月から8月までの水温が約3度も低くなると予想され、アユの成育に多大な影響を及ぼすと同協会は警告している。

→→ 黒部川のダム堆積物をどっと流し出した結果、川も海もひどいことになりました。一度壊れた自然は元に戻すにはすごく時間がかかるようです。有明海の水門開放も、一年後とか言っている暇はないはずなのに・・・

2.山村共同体の破壊
 水没地域となった山村住民は、移転を余儀なくされる、先祖代々の土地を奪われた山村では過疎化が進み、地域共同体が崩壊する場合もある。新潟県北部の朝日連峰の山ろくにあった朝日村三面(みおもて)集落は、県が建設した奥三面ダムによって全住民が下流の村上市に移住し、集落は消滅した。

→→ 徳山ダムの悲劇は記憶に新しいですよね。人間ならほとんどが目の前のお金に心が揺れ動くのはよくわかります。でもそのあと大変な目に遭っている人も多いと聞きます。
 ダムだけではありません。無用な空港建設も大問題です。中部新空港なんて、本当に必要なんでしょうか。これもゼネコンに仕事をあげるための、政治家の癒着としか考えられません。小牧空港の国際線ビルなんかは改築されたばかりなんですよ。5年後には移転するというのに、なぜ作るんでしょうか。まともに税金を払うのがばかばかしくなります。

3.碓砂(たいさ)
 山間地に造られるダムは、大量の土砂を貯水池にためる。治水目的のダムは貯水池が空いていてこそ、大雨時に水をためて下流域の洪水を和らげることができるとされる。しかし、堆砂で貯水容量が少なくなると役目を果たさなくなる。
 また、上流域でダムに砂を奪われた河口域では、海岸浸食が進み砂浜が消滅していく。
北アルプスの鷲羽岳を源流とし、富山湾に注き込む黒部川では、関西電力が日本で初めて、貯水池の土砂をダム本体に設けた排砂ゲートによって排出できる出し平ダムを建設した。しかし、排砂によってへドロ化した土砂が、川や海を汚すなどの事態を生み、漁民や住民らの反発を招いている。
 急しゅんな山岳地帯を持つ中部地方の天竜川と黒部川は堆砂の激しいことでも知られる。国土交通省の資料によると、総貯水容量500万トン以上のダムのうち堆砂率が最も高いのは、天竜州の平岡ダムの84.9パーセント、堆砂率50バーセント以上のダムは全国で14を数え、ダム建設にとって堆砂問題は、最もやっかいな問題となっている。

→→ ダムや堰堤はすぐに堆砂で埋まってしまいます。そうするとまた新たなダムや堰堤を築かねばなりません。そんな繰り返しをしていたら、どうなるんでしょうか。


ダムとは   

 河川法では基礎地盤から堤頂までの高さが15メートル以上のものをダム、それ以下のものを堰(せき)としている。日本の川では短時間に大量の水が一気に流出するので、洪水被害を防ぐには流水の一部をダムにたくわえ、下流への放流量を制限する方法が効果的とされ、「ダム神話」が生まれた。一方、急勾配な川の多い日本では、巨大なダムを建設しても貯水量はせいぜい数億トン程度にしかならない。すべてのダムの総貯水容量は200億トン余りしかなく、ダムによる洪水調節には限界がある。(アメリカのフーバーダムは貯水容量348.5億トン)
 「ダム年鑑」によると、1999年3月現在、ダムは全国に2678あり、このうち洪水調節を目的としたダムは557。その洪水調節容量は38億7466万3000トンにのぼる。また、計画中や建設中のダムは、361(洪水調節容量20億9127万3000トン)ある。


アメリカでの脱ダムの動き   

 世界のダム事情に詳しい新潟大学の鷲見一夫教授によると、アメリカではこれまでに約5500の大規模ダムと約96000の小規模ダムが建設され、現在長さ1000キロメートル以上の河川のうち、ダムがないのはイエローストン川だけとなった。
 しかし、環境保全を求める世論やダムヘの税金投入に疑問の声が高まったため、1980年代から新たなダムの建設は行われていないという。1994年には、ダム建設の主役を担ってきた開拓局のダニエル・ビアード総裁が「アメリカにおけるダム建設の時代は終わった」と発言して、世界中の自然保護団体の注目を集めた。
 さらに、老朽化し、安全性に問題のあるダムの撤去が、1963年のアイダホ州のクリアウォーター川のクレーンジビルダムを皮切りに開始された。最近では大型ダムも対象となり、ワシントン州のオリンピック半島の工ルワーダムとクラインスダムの撤去措置か進んでいる。


高まる川辺川ダム反対運動   

 九州の不知火(しらぬい)海へと流れる球磨川の最大支流・川辺川に国土交通省が建設中の治水や利水を主目的とした多目的ダム(高さ107.5メートル、長さ274メートルのアーチ式)に対し、自然保護団体ばかりか利水対象となる流域住民や漁民からも建設反対の声か上がっている。
 同ダムは1963年から3年連続の水害をきっかけに計画された。"子守唄の里"として知られる五木村の中心部を水没させる。
 その効果にも疑問の声は強<、治水についても、1959年に球磨川本流に市房(いちふさ)タムができてから中流域の人吉市では水害がひどくなったとして、洪水時のダム放流との関係を疑う住民も多い。
 また、利水に関しては「ダムから農業用水を引く農水省の川辺川総合土地改良事業は不必要」と対象農家の半数以上の約2100人か裁判で国と争っている。(一審は2000年9月に原告敗訴)
さらに、不知火海沿岸の37漁協は2001年2月に川辺川ダム対策委員会を設置。諌早(いさはや)湾干拓による有明海の養殖ノリ被害の教訓から、「ダムも海に大きな影響を与える」と環境影響調査の実施を国土交通省や熊本県に要望した。また、アユ漁で生計を立てる球磨川漁協の組合員の半数以上がダム反対の立場を明らかにし、国からの漁業補償受け取りを拒否している。


生態系破壊聞われる河口ぜき   


東京湾のように入り口か狭く、長円形をした閉鎖海域では、台風時に「高潮」が生じる。高潮のピーク時に満潮が重なると川の上流に向かって水が押し上げられ河口域で洪水が起きる。河口ぜきはこうした水害や海水の浸入による農作物などへの「塩害」を防ぐ効果があるとされるが、一方で、川と海を行き交う生物の活動を阻害してしまう。三重県の長良川河口ぜき建設では、サツキマスと呼はれるカワマスやアユ、シジミなどの生態系破壊か問題となっている。


「河川はんらん」前提の治水対策を   


 2000年12月、当時の建設相の諮問機関である河川審議会(古川昌彦会長)は、ダムや堤防だけに頼らず、「河川ははんらんする」という前提に立ち、流域全体で効果的な治水方法を考えるよう提言する答申をまとめた。
 2000年9月に名古屋市とその近郊で大規模な浸水被害が発生。被害額は9000億円を超えるとみられている。答申では都市化による土地利用の激変や異常降雨の頻発により、通常の河川改修では限界にきている地域もあり、治水対策のメニューを多角化する必要があるとした。
 流域で浸水被害が予想される地域住民や市町村には、「はんらん域」であることを通知。市町村は避難場所などを示したハザードマップを作製したり、はんらん域での新たな住宅建設を規制するなど、住民への情報提供に努める。また、家屋などの財産を守り被害を最小限にくい止める工夫として、集落や耕地を堤防で囲む輸中堤の建設や住宅地のかさ上げなどによる水害に強い街づくりへの取り組みを提言している。
 1997年の河川法改正で当時の建設省(現国土交通省)は住民意見を河川整備計画の参考にするとした。今回の答申も住民意見を治水対策に反映させるべきとしており、従来の国主導の治水対策からの転換を促している点で注目される。

問題となった主な計画   

1953年、九州・筑後川で起きた大水害をきっかけに、同川水系上流部で下うけ(熊本県・大分県)・松原ダム(大分県)構想が持ち上がったが、地元の大山林主の室原知幸氏が「蜂の巣城」と称する要さいを山に築き、7年間も立てこもってタム反対闘争を行った。

その後、群馬県の八ツ場(やんぱ)ダム、熊本県の川辺川ダム、新潟県の奥三面ダムなどで、水没住民による反対闘争があった。

80年代後半になると、長良川河口ぜき計画に対し自然保護団体か反対運動を組織して河川の生態系保護を訴えた。以来、川辺川ダムや八ツ場ダム、徳島県の細川内(ほそごうち)ダムなどでも都市住民も参加しての反対運動が展開されてきた。

河川環境と共生した治水の時代に   
 新潟大学工学部教授 大熊 孝

 明治時代中期以降の近代的治水は、数十年から二百年に一度発生するような洪水を対象としてきた。すべて河道(かどう)に閉じこめ、できるだけ速く海に突き出すという河道主義の思想だ。それは、巨大なダム群、堤防、放水路を主体に計画されてきた。
 河道主義治水は、洪水が河道からあふれないことが前提となっている。そのため、あふれることの対策がないままに沖積平野の開発が進み、被害ポテンシャルを高めた。当然、治水計画を超える洪水がきて堤防が切れてはんらんしたら、昨秋の東海豪雨のように大被害が発生する。
 また、ダムをはじめ大規模な計画のために完成まで何十年もかかり、その間の地域開発の停滞などによって地域住民の生活が安定せず人心が乱れた。同時に、通常の洪水対策が後回しになり、実質的こ被害がでる確率が高くなっている。
 一方、河道主義を支えてきた近代的河川技術は、はがねとコンクリートの近代的素材を中心としてダムをはじめ河川を横断するさまざまな構造物を造ることで、川を自在にコントロールしようとしてきた。
 しかし、ダムなどは河川の物質循環を遮断し、河川の生態系や河川沿いの地域文化を破壊してきた。また、巨大構造物は、市民などの素人を寄せ付けず專門家のみによって維持されてきたが、その維持管理費も巨額だ。しかも、1900年代初期に造られたものは、腐食や劣化で耐用限界にきておリ、近代的技術の限界性を示している。
 かっての伝統的技術は、土・石・木材の自然素材を主体と.していた。多孔質で生物がすみやすい河川生態系にやさしい近自然工法の典型である。石や土は千年たっても劣化しないなどの利点があった。半面、人力に依存することが多く、施工や維持管理が難しかった、しかし、現代ではハイテク土工機械カの助けを借りれば、施工や維持管理は容易だ。地域の自然素材を生かすことで、新たに地域循環型の技術を再構築できる段階にきている。
 ダムは、確かに短期的には治水に大きな役割を果たしてきた。しかし、劇薬と同じで、環境破壊、堆砂、地域社会破壊などの副作用を生んできた。近代技術神語のもと、専門家主導で一方的に行ってきた治水ではどの川も同じようにダム・連続堤防中心の治水方法となってしまう。治水は、自然を相手にしているだけに、川によってその対策は多様であるはず。川をよく知っている流域住民の意見なども重視していくべきだ、
 昨年末の河川審議会の答申では、浸水を拡大させない伝統的工法であった水害防備林整備などの必要性が強調された。はんらん受容型の治水を進める上で評価できる。
また、長野県の田中康夫知事の「脱ダム宣言」は、堆砂で悩むダムの多い長野県から出されたことで歴史的な必然性を感じている、ダムに頼っても百年や二百年に一回の大洪水などは絶対に防げない。子孫に良好な環境を残すため、専門家主導ではない洪水対策に住民が真剣に取り組む機会を「脱ダム宣言」は与えた。


ダムに代わる治水策   

1.かすみてい 霞堤


武田信玄が編み出した急流河川の築堤工法。

堤防の一部の区間に開口部を設け、その下流部の堤防を住宅地などがある堤内地側に伸ばし、上流の堤防と二重になるようにした堤防。洪水時には、開口部から流水の一部が堤内地に逆流することで洪水の勢いが弱められる。洪水後には、その開口部から川に排水される。


2.ゆうすいち 遊水地


洪水を一時的にためて、流量を少なくするための区域。
堤防の一部を低くした「越流堤」が併設され、洪水を越流させて遊水地に導く。戦国武将の加藤清正が最初に造ったとされる。明治以降も利根川水系や淀川水系などの大河川で大規模な遊水地が建設された、利根川水系の「渡良瀬(わたらせ)遊水地」は巨大ダムに匹敵する総貯水容量約2億トンの日本最大の遊水地。
一方、効率的な都市空聞の利用のために、普段は水をためず公園や運動場などにも利用する多目的な遊水地もある。


3.かはんりん 河畔林の復活


堤防沿いの河畔林は、洪水によって堤防が壊れても浸水の拡大を防いだり、はんらん水を減少させるなど、治水上の効果が見直されている。

1997年の河川法改正で「樹林帯」制度が創設され、河川管理者が河畔林やダム湖畔林などの樹林帯を整備できるようになった。


4.水害に強い街づくり 輪中堤(わじゅうてい)・かさ上げ


住宅地のかさ上げやはんらん域での建築規制、輪中堤(わじゅうてい=ある区域を洪水から守るために、その周囲を囲むように造られた堤防)などの築堤事業によって、短期間かつ経済的に家屋浸水の対策を行う。
木曽三川下流の濃尾平野西南部が輸中地帯として有名。紀伊半島の熊野川水系相野谷(おのだに)川流域の三重県紀宝(きほう)町では、国土交通省や県、町が連携して輸中堤建設やはんらん域での住宅新築を禁止するなどの総含的冠水被害軽減対策事業を行っている。


5.すいげんりん 水源林整備


水源林は雨水をたくわえ、洪水の発生を防ぐ。スギやヒノキなどの人工林は、間伐や枝打ちなどの作業をしないと日光が地面に届かず、下草が生えないので保水機能が衰える、このため、植林をはじめ森林の整備は欠かせない。高知県の橋本大二郎知事は2001年1月、森林を守る経費を県民が負担する「水源税」構想を2002年度中に制度化したいと発言し、注目されている。


6.ハサードマップの普及


洪水で河川がはんらんした場合に浸水が予想される区域や避難地、避難路などについてわかりやすく図示したもの。洪水はんらんの危険性について普段から地域住民の理解を深める。