セロニアス・モンク

セロニアス・ヒムセルフ 2002年11月10日
モンクの無伴奏ソロ・アルバムの傑作。私がセロニアス・モンクのアルバムの中で、最初に買ったものである。それが間違いだった…厳かな雰囲気の中で、ピアノだけが淡々と響く…当初私はこれを聴いて5分で眠ってしまった(^^ゞまさに分殺ミュージック。
モンクの独創的演奏は、他の伴奏者にとっては時としてやっかいで、戸惑ってしまうこともあった。モンク自身にとってもヘタに伴奏がつくと、かえって自分の想像力を制限されると考えていたかもしれない。このアルバムを聴くと、そんな感じがする。いつもの陽気なタッチは影を潜め、自分のイマジネーションを最大限に解き放つ、完全なる自由な世界。朴訥としたタッチの中に、次にどんな音がくるか想像できないスリリングな魅力がそこにはある。
どの曲も聴けば聴くほど味が出てくる。こんなに飽きのこない深い音楽は、滅多にあるもんじゃない。モンクの有り余る才能がズブリと出てくる嚢中の錐サウンドだ。
<パリの4月>
ゆったりとした哀愁に満ちた魅惑の演奏。
<ファンクショナル>
何度聴いても飽きない前衛っぽいプレイがいい。緊迫した雰囲気が全曲を通じてひしひしと伝わってきて、正座して聴かなければならないような感覚にとらわれる。これを毎日聴くのは非常に辛いだろう。1年に1回ぐらい、ごそごそと取り出して聴くぐらいがちょうど良い1枚。
本アルバムのマイベスト<ファンクショナル>


セロニアス・モンク・トリオ 2002年10月23日
1950年代に吹き込んだモンクの作品には力作が多い。このアルバムもその1つだが、実はモンク自身にとっては不遇の時代であった。やってもいない麻薬所持の罪を着せられ、懲役に服し、1951〜57年までニューヨークのクラブに出演できなくなってしまったのである。収入はレコーディングと出稼ぎに頼ることになってしまうのだが、そのレコーディングも年に数回で、しかもあまり売れなかった。1957年疑いが晴れ、ようやくニューヨークのクラブ出演ができるようになり、ジャズ界で日の目を見ることになると同時に、この不遇の6年間の作品も再評価されるのである。
さてアルバムについてだが、10曲のうち7曲がモンクのオリジナルである。どれも大体3分前後の作品で、気楽に聴けるものばかりだ。
<リトル・ルーティ・トゥーティ>
汽車を題材にした曲で、汽車の蒸気の音を表現するところなんか楽しく、陽気なメロディだ。
<バイヤ><モンクス・ドリーム>
シンプルで、耳に溶け込むようにリラックスして聴ける。これはアルバム全体にもいえることで、決して難解ではない、心にダイレクトに響く、明鏡止水の音楽という感じである。
<ブルー・モンク>
親しみやすいメロディーが印象的で、モンク独特のフレーズの区切り方、1音1音が有機的に繋がって音楽になっていく様がスリリングで魅力的だ。
本アルバムのマイベスト<モンクス・ドリーム><ブルー・モンク>


ブリリアント・コーナーズ 2002年7月28日
モンクの音楽は聴衆に媚びない。「セロニアス・ヒムセルフ」で、私は彼の独特な世界観に圧倒されてしまった。正直な話、そのよさが理解できなく、しばらくモンクの音楽から離れた、いや逃げたと言ったほうがいいかも(^^ゞだがジャズを聴き、楽しむ上でモンクの音楽はどうしても通らなければならない登竜門みたいなものであるということを感じ、代表作であるこのアルバムを手にとった。最初の印象はやはり難しい…それでも負けるかと何回か聴いてみた。すると1曲気になったものがあった。4曲目の「アイ・サレンダー、ディア」である。この曲はハリー・バリスが作曲した美しいメロディーが特徴のスタンダード曲である。モンクのソロプレイで、独特の変わった演奏だがメロディーから大きく逸脱することなく非常に情感豊かなナンバーになっている。この曲を聴いてはじめて私は、モンクってこんなに素晴らしい歌心があるんだと気づくと、これまでのモヤモヤがパッと晴れたかのようにこのアルバム全体を楽しめた。これまでなんか訳わからんと思っていた「ブリリアント・コーナーズ」が、非常に心地よく胸に響く。ラストの「ベムシャ・スウィング」はマックス・ローチのティンパニの効果もあってすごい迫力だ。クインテットのメンバーはいずれも強烈な個性を持っており、ソロの連続が虹色に楽しめる。