はじめに

「趣味」とは
 
最近趣味という言葉をよく耳にする。その要因の一つとして例えば、現代日本。高度成長期、バブル景気の時代盲目的に仕事に打ち込んできた人々が、不況にさらされ、金を失い、職を失い、目標を失いかけた時、この言葉が頭をよぎり、今まで仕事一筋に生きてきた自分がふと我に帰り、自分の人生を見つめなおし、そして一回限りの人生を楽しもうと様々な趣味を楽しみ始めたことが挙げられる。
 そもそも「趣味」という言葉を広辞苑で引くと、
(1)感興をさそう状態。おもむき。あじわい。
(2)ものごとのあじわいを感じとる力。美的な感覚の持ちかた。このみ。
(3)専門家としてでなく、楽しみとしてする事柄。
とあり、上記は(3)をさす。現在様々の人々が様々な趣味を楽しんでいるが、最近ある一つのことに異常に熱中する人をさす「マニア」という言葉が横行するようになった。
世間では「趣味」と「マニア」の意味を似たようなものとして混同する向きがあるが、趣味とは(3)の言葉にもあるように専門家のようになるのではなく、あくまで楽しみとしてする事柄なのである。マニアがいけないといっているわけではない。ただ私はこの言葉が好きではない。あまり品のいい言葉に聞こえないからである。
 志賀直哉曰く、「美術が好きになるのはいいが、通がる興味が主にならぬように注意する方がいい。」これは趣味全体にも当てはまるような気がする。

ほどよく楽しむ

 私の個人的な信条は趣味はほどよく楽しむべきである。世の中に趣味として成り立つ事柄はごまんとある。向き不向きこそあれ、人生一回限りいろいろ楽しまない手はない。一つのことに熱中しすぎるのはもったいないのである。さらに趣味には金がかかるものが多い。使い出したらきりがない。財産をつぎ込み熱中し突っ走った挙句、ふと冷めてしまった時のことを考えると目も当てられない。一度立ち止まって考えてみるのも必要ではないだろうか。

のんびり楽しむ
 毎日1冊は本を読み、毎日1本は映画を見て、毎日1つはお稽古事に通う。趣味を仕事のようにこなし、もちろん本業の仕事も深夜までがんばり(時には徹夜)、週末は家族サービス。こんな充実した毎日を送っている人を私は知っています。おそろしく元気な人です。1日24時間じゃ足りないそうです。脳がそういう作りになっているのでしょうね。それが彼流の生きかた。私がやったら間違いなく1日でグロッキーでしょう。ただ、元気だなーとは思いますがすごい・うらやましいとは思いません。人生一回限りいろいろ楽しまない手はないとは書きましたが、人生そんなに充実させる必要がないと考えるのも私。たかだか80年程度しか生きられない(80年なら十分だが)動物・・・人間。意気込まずにのんびりと楽しみましょうよ。ベルトコンベヤーのように流れ作業で数をこなすのではなく、一生のうちで出会う数少ない本や映画や音楽などを玩索し感動を1つ1つ大事にする。それがモリガン流趣味の楽しみかた。

記憶?感動!
 感動することがいかに大切かを気づかせられるきっかけとなったのが私が中学・高校生の時のクイズブーム。毎日のようにクイズ番組が放送され、特番もしょっちゅうだった。私もそのブームに乗りクイズに夢中になり、クイズ本を読みあさり、クイズ研究会なるものまでできてしまった。しかし大学生になり映画やジャズに親しむようになると、クイズで知った映画タイトルやジャズのアーティスト・アルバムが、こんな素晴らしいものだったのかと思うことがままあるようになった。やがて機械的に物事を覚えることが馬鹿らしくなり、物事に感動することが趣味として大事なことだと考えるようになったのである。(ただしクイズは純粋にゲームとして今でも私の趣味としてほどよく楽しんでいる。そこから新たな趣味の発見に繋がるしね…)

忘れることは大事なこと
あの本読んだけど内容なんだったっけ?あの映画のラストってどうなるんだった?せっかく見たのに頭に残らないなんて・・・私も昔はそんなことに頭を悩ましていました(^_^;)でも最近は忘れるからこそ次また見たくなるし、もう一度感動できる。作品を消費するのではなく何度も味わう。忘れるということは非常に有難いことなのです。

ペトロニウス
 クオ・ヴァディスという小説をご存知だろうか。シェンキェーヴィチの1896年発表の歴史小説である。ローマ教皇ネロによる初期キリスト教の迫害を描いた作品だが、この中にペトロニウスという人物が出てくる。趣味・文化人で才気あふれる彼のローマでの通り名がこのサイトのタイトルである「趣味の審判者」なのである。この場合趣味の意味は先ほどの広辞苑では(2)にあたる。彼は作品の中でおしゃれで趣味の良い美的センスのものさしのような粋な人物として描かれている。(岩波文庫 木村彰一訳)
 粋という言葉は今ではあまり使われないが、私は主人公よりも彼のその粋な生き方に魅力を感じ、今回このサイトのタイトルとした。(タイトル負けしないようなものを作っていかなければならないとプレッシャーはあるが、実際は結構気楽にやっていこうと思っています)

はじめはとびこみ
 趣味をはじめるに当たって大事なことは何か。それはちょっと興味を持ち始めたら、ぽんと飛び込んでしまうことである。特に文化・芸術というと何か退屈なものという先入観にとらわれがちだが、思い切ってその扉を開けると素晴らしい世界が待っている。変に難しく考えず、気楽につきあってみよう。新しい趣味の発見は何者にも変え難い喜びである。このサイトを見て、こんな趣味の楽しみ方があるのかと、マニアである方も特に趣味のない方も少しでも興味を持ってくれたら望外の喜びである。あっそうそう、私は感動専門で小難しい能書きはたれないから、専門的な評論が読みたい方は別のサイトを探してね(^_-)-☆

(2002.1.6)