悪い奴ほどよく眠る(1960・日) 2002年9月22日
これは面白かった。土地開発公団の副総裁岩淵(森雅之)の娘と秘書の西(三船敏郎)の披露宴が行われる。この西という男は5年前新庁舎の建設に絡む不正入札疑惑で自ら命をたって事件をうやむやにした課長補佐・古谷の実の息子である。彼の友人と戸籍を交換し、次々と罠を仕掛け事件に絡んだ人物を追い込んでいくが・・・巨大組織の事実隠蔽のやり方や汚さは今も昔も変わらない。岩淵が娘を騙し、西の居場所を聞きつけるあたりからはドキドキハラハラで素晴らしい緊張感だ。また西が西村晃演ずる(若い!)白山を追いつめるシーンはすごい迫力である。ただし後味が悪い映画だった。


わが谷は緑なりき(1941・米) 2002年8月27日
19世紀末の炭鉱町ウェールズを舞台に炭鉱労働者一家の苦難の生活を描くジョン・フォード監督のヒューマンドラマ。ロケができなかったため、すべてセットを作り撮影したということだが、それが広大かつ巨大であり、スケールの大きさにまず驚いた。不当な賃下げによるスト決行や、炭鉱内の事故による父の死など貧しさに耐えながらけなげに生きる人々を見て不景気に苦しむ現代日本人とちょっと比較してしまった。一家の末っ子ヒューは「名犬ラッシー」や「猿の惑星」でカルト的人気を得たロディ・マクドウォール。本作がデビュー作と思えないぐらいなかなかの名演である。


私のように美しい娘(1972・仏) 2002年6月23日
トリュフォー作品の中では異色ともいえるコメディー一直線といった感じの映画である。冒頭本屋である女性がある社会学者の本を探しているシーンから始まるが、その本はまだ出版されておらず、なぜ出版されていないのか、社会学者の身に何かあったのかということで、一年前にさかのぼり社会学者スタニスラスを主人公に物語が始まる。スタニスラスは本の取材のため刑務所に訪れ、そこでカミーユという女性に会う。カミーユは自由気ままな女性で、自分の男性遍歴をウソ偽りなく気楽に語っていく。カミーユとスタニスラスの人間性の対比が面白い。カミーユは奔放かつ能天気な正確なのに対し、スタニスラスはまじめ一辺倒といった感じである。自分と正反対の性格のカミーユに接して、彼女の態度にいささか戸惑いを感じながらも、次第にその魅力に取り付かれていく。カミーユの犯罪容疑は殺人で、スタニスラスは必死に駆け回って彼女の無罪を証明するが…これ以上書くと面白くなくなるのでここまでにするが、それはともかく彼女を巡る奇妙な男たちも傑作だ。特に害虫駆除の男は彼女を聖女と崇め、わけのわからんきっかけで行為をした後、金を払うという変わり者である。彼女とベッドをともにするとき必ずサーキットの車の走行音をレコードでかける男も変なやつだ。カミーユがその男の部屋に入る際、その音を聞いて、他の女といることを知り、警戒するシーンは笑える。作品中”運命の賭け”という言葉が出てきて、いくつかの重要なシーンでその様子が見られるのでちょっと注目してみましょう。