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5題連続 いつかまたどこかで / ふれた指先から / 存在理由 / 微笑んでいて下さい / もう、死んでもいい

―いつかまたどこかで―

 君が、僕に背を向けた。
 潤んだ美しい瞳を伏せ、艶やかな紅色の唇が、「さようなら」を告げた。
 でもそれは、真実じゃない。君がついた、優しい嘘。
 僕は、笑いかけた。君の、淋しげな背中に。
 きっと、いつかまた、会えるよ。
 僕はいつでも君を想ってるから。だから、また、会えるよ。
 君は、応えない。
 そして、君は立ち去った。僕を、置き去りにして。
 でも――
「会えるよ、きっと、また」


―ふれた指先から―

 初めて触れた、君の指先。五月雨に濡れて、冷えきっていた。
 抱きしめて、温めてあげたのに、君は心を溶かしてくれない。僕を見つめながら、僕をその瞳から消し去ろうとしていた。
 髪も頬も、唇も・・・僕だけが触れて、僕だけが愛していればいい。
 僕に愛されていることを知って、君は震えるほどに怯え、戦慄いている。
「あなたなんか、好きじゃない」
 目を背けて、愛らしい嘘をつく。
 君に目隠しをして、どこかに閉じ込めてしまいたい。
 誰の目にも触れさせず、僕の声だけを聞かせて、僕の指先の感触だけを肌に刻みたい。
 けれど、閉じ込めてしまったら、君はきっと色あせてしまう。
 僕を拒むことすらしなくなったら、それはきっと、冷えた指先よりもっと冷たく、痛いに違いない。


―存在理由―

 僕という炎が、君という風に出逢った。
 僕は自分の炎で焦がれて死んでも、かまわなかった。
 愛していると、何度繰り返したろう。
 僕は君を愛している。
 そのことだけが、世界の全て。
 事実なんて、何も知らなくていい。それを知ったからといって、僕の想いに変わりはない。
 君が事実を知っても、僕がそれを打ち消した。
 何故、君は泣くのだろう。
 知らされた事実よりも、今この一瞬の、激しい想いに身を委ねてしまえばいいのに。
「君は君。それ以外の何者でもないよ。だから、僕だけを見つめて。他は、何も知らなくていい」


―微笑んでいて下さい―

 君が、壊れた。
 僕と会えないでいた、その空白のせいで。
「さようなら」を告げた君が、たった一年・・・僕には永遠のような一年・・・で、僕の許に戻って、縋った。「もう、あなただけ」と。
 赦されない恋に身を委ねたことが、きっと、君の周囲を惑わせた。
 誰もが僕と君を、呪わしい、汚らしいと罵った。
 可哀想な、君。
 涙すら流さず別れを告げた、強く美しかった君は、もう粉々に砕けてしまった。
 脆い淡雪のような君を見ているのは、とても辛い。
 海が見たいと言った君を、抱き寄せた。
 いつかのように冷えきった君の指先に、僕はそっと口づけた。
「微笑んでいて。君に涙は似合わないよ」
 君の凛とした美しい微笑を、もう一度僕に見せて。
 ・・・君は、微笑った。


―もう、死んでもいい―

 君と出逢ったのは、春。・・・そして今も、春。
 荒波が打ち寄せる断崖の上では、花の香りなどしない。吹きすさぶ風は、冷たい潮の香。
 せめて、花があればよかったね。
 僕がそう呟くと、君は首を傾げた。
 僕の体に身を寄せて、見たかったという海を眺めている。
 荒れ狂う海は、ごうごうとうねりをあげる。激しく互いを求め合った僕たちの激情に、どこか似ている。
 波は岩に砕けて、高く飛沫をあげる。
「僕を、愛している?」
「ええ。あなただけよ。もう、他には何も要らない」
「・・・うん」
 君は、微笑む。
 美しい微笑。
 僕の求めた、微笑。
 僕にだけ向けられる、微笑。
「・・・もう、――いいよ」
「え?」
 僕は、君の肩から手を離し、そして、強く・・・強くその背を押した。
 君が、断崖の下の、荒波に呑まれるように。
 君の悲鳴は、風と波の音に消されて、僕には届かない。
 僕は、立ち尽くす。
 そして、君を呑み込んだ暗い青色の海を眺めた。

「もう、いいよ」

 僕の望みは、叶ったから。

「美しかった、僕の・・・僕だけの、姉さん」

 僕を愛して、微笑んで欲しかったから。

「もう、死んでもいいよ」

 僕は、微笑った。

- 了 -

 

こちらのお題は「自主的課題」様の「適当課題24」の5題。そのまますぽっと使ってみました。
(C) るうあ「真夜中の箱庭」

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