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写真で見るSPORTのデザイン

ここでBXのデザインについておさらい。(ご存じの方も多いでしょうが)

シトロエン社は、BX開発にあたり自社のデザインチームのほか、ベルトーネ、イタルデザイン(ジウジアーロ)、ユーリにも依頼。
当時ベルトーネのデザイン・チームは、ランボルギーニ・カウンタックやランチャ・ストラトス等をデザインしたかの有名なマルチェロ・ガンディーニが率いていた。
BXのデザイン・コンペに勝利したベルトーネはシトロエンと契約するが、
当時ベルトーネと密接な関係にあったルノーはベルトーネとの契約を破棄し、
ベルトーネを巣立ったガンディーニと契約して彼は「クラマー」を設立するという曰く因縁がある。
よってガンディーニによって基本デザインはできてはいたのだろうが、
細部(特にインテリヤ?)においてはその後のベルトーネや自社デザインチームでリファインされていることが考えられる。

BXのデビューは1982年パリサロンである。
その直線的なフォルムはそれまでのシトロエンの概念を大きく打ち破るもので
多くの失望と多くの賞賛の声、両方が送られたことは想像に難くない。

ここで、初期型BXを所有の平さんのご協力によりノーマルのBXと比較することができましたので
比べてみながらBXのデザインについて論じてみたいと思います。

フロントビュー

front view with 16TRS

ここでの違いはバンパーと「へへマーク」の色のみである。
バンパーはすっきりした中にも幅広の凹んだプレスラインが入ったデザインの
”ノーマル”(左)に比べ、
”SPORT”(右)はエアダム風に無骨になっており当初よりフォグランプを装備したものとなっている。
ちなみにマーシャルのフォグは純正ではなく、後の”GTI”等に見られるものと同一のものが純正のフォグである。
細かく見ると、ノーマルもバンパー下中央付近には黒色のチンスポイラー形状のものが付いている。

ボンネットはこの当時ガラス繊維強化のポリエステルで、本国ではバンパーとの境に開口部がないものも多いようである。
また、当時ヨーロッパで発売されていた”GT”は、カタログで見る限り
この長いボンネットで、ボディ同色のバンパーの形状は”ノーマル”のままでありながらその四隅にはゴム製(当然黒色)のガードが付いており、
個人的には格好悪く見える。
”GT”のカタログを見ると、撮影した車にはフォグランプを装着してあったのを、写真から印刷する際に黒くつぶしてある様子が伺え、
フォグランプはオプションであったようである。

「へへマーク」は”ノーマル”のシルバーのクロームメッキに比べ(写真では色が飛んでしまって見えにくいですが)、
”SPORT”はクロイ(黒い)メッキである。

サイドビュー

side view 16TRS

side view SPORT

フロントバンパーの形状の違いはサイドから見た方がより明確である。
”ノーマル”は最上部からなだらかに逆アングルで下った後、急角度でタイヤハウスにつながる。
写真では少し後方からのアングルなので見にくいが、ラジエータ開口部付近では少し前方に張り出した形状である。
(これはフロントビューからの写真の方がわかりやすい)
対して
”SPORT”のバンパーは最上部の角が左右のウインカー部分から前方にかけて少し斜めにカットされている。
ウインカーの後端に当たる部分からタイヤハウスまでは斜めのカットが無くなっている。
その下に2本のプレスラインが入っていてラインの間は少し高くなっている。
更にその下はエアダム状となり最下部は多少出っ張っていてチンスポイラー風にはなっている。

フロントフェンダーは太いタイヤをクリヤするために無骨なオーバーフェンダー(FPR製)になっている。
タイヤハウスの形状は(
”ノーマル”も含め)、
他の車のように安易に半円形とせずに台形としているところが妙なこだわりである。

”SPORT”のサイドマーカーは”ノーマル”の位置ではオーバーフェンダーで隠れるために少し上方へ移設している。
また、オーバーフェンダーの上端はフロントのウインカーとリヤのコンビネーションランプの中央線を結ぶラインである。

サイドスカートは前後のオーバーフェンダーをつなぐように設置されている。
”ノーマル”のこの部分はブラックに塗装されている。

また、フロントドアに付くデカールはこの当時スポール仕様製作に血迷っていたシトロエンが得意にしていたようで
AXのSPORTにも同様のものが見られる。

リヤのタイヤハウス周りについては、”ノーマル”の方が当時のシトロエンのアイデンティティを濃厚に醸し出している箇所と言える。
前輪のように左右に首を振らない後輪は覆ってしまう方が空力的に有利であることは、
ホンダのインサイトを見ても明らかである。
通常、タイヤ交換時に手間がかかるために後輪をカバーで覆うということはしないが
シトロエンではDS以来の伝統である。
ただ、BXではCXやインサイトのように取り外し式のカバーとはせずに
タイヤ交換のために車高を最高とすると、何とかタイヤを抜き出すことができるギリギリのところで切り落としてある。
余談だが、うちの長男坊が小さい頃、シトロエンの後輪が隠れているところが大好きで、
荷台のアオリを倒すと後輪が隠れる軽トラックも同様に好きになっていたということがあった・・・。

さて、”SPORT”のリヤのタイヤハウスの処理は、ガンディーニのアイデンティティが強烈に活かされているのだがこれはどういったわけであろうか。
ガンディーニがデザインする車のリヤのタイヤハウスは、カウンタックLP400(最初期型)を見れば一番よくわかるが
前方から後方へ大きく斜めに跳ね上がった形状にすることが多い。
しかし、前述のようにガンディーニはBXが世に出る直前にベルトーネから去っており、
”SPORT”のデザインに直接関わったとは考えがたい。
ベルトーネにガンディーニのこのデザインが残されていたのか、
当時のベルトーネのデザインチーフ、マーク・デュシャンの計らいか、
はたまた、シトロエンのデザインチームの確信犯的犯罪行為なのか。
はっきりしたことはわからない。
ただ、リヤバンパーとの間の余りにも大きい隙間が、折角のこのデザインを大きくスポイルしていることは残念である。

Cピラー、つまりリヤのクオーターパネルは非常に太いが、”ノーマル”は透明になっている箇所があり後方視界を助ける。
このデザインも、通常の6ライトデザインと異なり、BXらしさを出している。
ちなみに左ハンドル車の場合、右後方が視界になるので私はインナーミラーの左横に補助ミラーを付けて右後方を見やすくしている。
ノーマルのこの透明部分は大して視界が広がるわけではないが、斜め後方に車がいるかどうか位はわかるので結構助かる。
これに対して
”SPORT”は一枚板で覆われている。
この処置はBXの誕生当時より廉価版には見られたもので、別に目新しいものではない。
”SPORT”では軽量化のために施された処置であろう。

ホイールについては、”ノーマル”ではボディのこれでもかと言うほどの直線デザインとは打って変わって丸でデザインされている。
”SPORT”では一転して直線基調のデザインで、純正のアルミは最終型までほぼこのままである。
好みで黒くペイントしているが、純正では普通のアルミ色です。
ちなみにアルミホイールはSpeedline製(最後期は明記されていないので不明)で、申し訳程度の冷却穴が開いているが、
スチールホイールはミシュラン製で冷却用の穴が全く開いていない特異なもので、ブレーキダストが表面に付着しないのが助かる。
しかし、このために前輪ブレーキキャリパー付近には冷却用の空気導入用のフィンが付いている。F1顔負けである。
ホイールカバーは他車と異なり、その全面をデザインできることとなり、
”TZI”に使用されたシンプルな直線基調のものがその最たるものである。

給油口には「へへマーク」が付いてますがこれは後付けですのであしからず。

リヤバンパーの形状は、”ノーマル”がフロントバンパーをそのまま対称形としたような形状に対し、
”SPORT”はやはりそのフロントバンパーと同じ様な形状にデザインしています。

リヤビュー

rear view 16TRSrear view SPORT

”ノーマル”ではテールゲートの後端上部にはスポイラー状の黒い箇所が成型されているやはりFRP。
”SPORT”ではウイング状のスポイラーが付き、ノーマルでは黒色塗装の箇所がボディ同色にされています。
ちなみに”GT”はトレイ状のスポイラー(黒色)です。

左右のコンビネーションランプの間は、ボディ同色でスマートな”ノーマル”に比べ、
”SPORT”はブラック塗装になってスポーティ感を出してます。
ここはステッカーを貼るには最適な場所で、貼り出したら止まらなくなってしまってもうゴチャゴチャです・・・。
ちなみにスポイラー左右に貼ってある水色のステッカーは「型式不明車の会」のもの。

今時の車はデザインがすっきりまとまりすぎてステッカーを貼るところが無いよねえ。
それから、ランプが後期型にコンバートされているのは、私の好みです。

バンパーは、やはりすっきりした”ノーマル”に比べて、
”SPORT”はご覧の通り。

おまけに、マフラー開口部は”ノーマル”が下向いている仏車独特のもの。
”SPORT”は例の後端だけを角形にプレスした代物。

さあ、こうしてみると”ノーマル”の初期型と”SPORT”、どうでしょう。
”ノーマル”はBXの直線基調がハッキリしていて非常にスマートな印象を受けて好感度は高く、完成度も高いものです。
”SPORT”はゴチャゴチャしすぎてスマートなデザインが随分とスポイルされていますが、
80年代のWRC グループBが全盛の頃のデザインテイストが漂ってはいます。
どっちが格好良いかの判断は皆様にお任せします。

また平さんには快くご協力いただきまして、ありがとうございました。
厚くお礼申し上げます。