愛と結婚について教える
教訓 251. この世は愛から。
Love makes the world go round.《愛は世の中を動かす》
人々がお互いに愛情と尊敬を示し合うならば、このコトワザのいうように、世の中はもっと住み良いものになるでしょう。そして、愛情をこめて人に接すれば、人も愛情をもって接してくれます。
(a) Love begets love.《愛は愛を生む》
(b) Love is the (true) reward of love.《愛は愛の(真の)報いである》「思えば思わる」
また、博愛は自分の犯した罪もつぐなってくれます。
(c) Charity covers a multitude of sins.[Peter]《博愛は幾多の罪を償う》
家族の愛情は、家出した道楽息子さえ、やがて家庭に呼びもどしてくれます。
(d) A bad penny always comes back.《偽金は必ず戻ってくる》(家出した道楽息子は忘れたころもどってくるもの)
男女の愛は、同情からも生まれます。
(e) Pity is akin to love. [Thomas Southerne]《憐れみは恋の始まり》「可哀想だた惚れたってことよ」「恋と哀れは種一つ」
このコトワザは、トマス・サザンの戯曲「オルーノーコ」Oroonoko(その原作はアフラ・ベーン
Aphra Behn の同名小説)が出典ですが、とくに日本で有名になったのは、夏目漱石が「三四郎」の中で引用しているからです。ちなみに、與次郎はこれを俗謡調に「可哀想だた惚れたって事よ」と訳し、廣田先生に「下劣の極」と貶されています。
教訓 252. 失恋もよい。
'Tis better to have loved and lost than never
to have loved at all. [Alfred Tennyson]《愛し失恋しても、まったく愛さなかったよりもずっとよい》
これは、テニスンが夭折した友人 Arthur Henry
Hallam を追悼して書いた詩 In Memoriam の中の一節です。失恋そのものは悲しいことかもしれませんが、しかしそれは恋の炎を燃やしたものにしかできないという意味では、得難い人生経験であるはずです。シェークスピアは「真夏の夜の夢」の中で、次のように書いています。
(a) The course of true love never did run
smooth.[Shakespeare]《まことの愛の道は決して平坦ではない》
教訓 253. 恋は盲目である。
Love is blind.《恋は盲目》「恋路の闇」
しかし、人は恋をすると理性を失うものです。恋と理性は両立しないといいます。「恋路の闇」や「痘痕も靨」に相当するコトワザがいくつかあります。
(a) Love and knowledge live not together.《恋と知識は両立できない》「恋は思案の外」
別掲 → 教訓85 矛盾する二つのことは同時にできない。
(b) One cannot love and be wise.《恋する人が賢明であるはずはない》「恋は思案の外」
別掲 → 教訓85 矛盾する二つのことは同時にできない。
(c) Love sees no faults.《恋は欠点を見ない》「痘痕も靨」
(d) Love hides ugliness.《恋は醜さを隠す》「痘痕も靨」
(e) Love me, love my dog.《私が好きなら私の犬も好きになって》「愛、屋烏に及ぶ」「坊主憎けりゃ袈裟まで憎し」
(e)は、日本のコトワザ「愛、屋烏に及ぶ」(愛する人の家の屋根にとまったカラスまで好きになる)と同じ意味のコトワザです。しかし、このコトワザには「坊主憎けりゃ袈裟まで憎し」を当てることもあります。愛と憎は反意語ですから、一見二つは対義コトワザに見えますが、愛するときも憎むときも、感情のおもむく範囲が相手を越え、相手に関係のあるすべてのものに及ぶという点では、立派な類義コトワザです。
さて、恋が盲目だとすれば、恋するものの目には相手の姿が正しく映りません。しかし、結婚相手は冷静に選ぶべきで、それには世間の評判も聞いてみなくてはなりません。
(f) Choose a wife by your ear rather than
by your eye.《妻は目でなく耳で選べ》
別掲 → 教訓25 外見で判断するな。
恋は、理性を奪います。恋の競争では、勝つことが至上命令になります。それは戦争と同じで、手段を選んでいる余裕はありません。
(g) All is fair in love and war.《恋と戦争では何でも正しい》
別掲 → 教訓80 目的のためにはどんな手段でも許される。
教訓 254. 恋の力は強い。
Love laughs at locksmiths.《恋は錠前屋をあざ笑う》
恋の成否の決め手は、体当たりの勇気です。気の弱い人には、恋をする資格はありません。
(a) Faint heart never won fair lady.《弱気な男が美人を得たためしはない》
別掲 → 教訓96 勇気をもって事に当たれ。
(b) None but the brave deserves the fair.[John
Dryden]《勇者ならでは美人を得る資格なし》
別掲 → 教訓96 勇気をもって事に当たれ。
しかし、憶病者でも一度恋におちいったものは、どんな障害をも排除するほどの力を身につけるから不思議です。
(c) Love will find a way.《恋には不可能はない》
(d) True love never grows old. 《まことの愛は朽ちることなし》
教訓 255. 親の愛も子に対しては盲目。
The crow thinks her own bird fairest.《カラスは自分の子が一番美しいと思っている》「親の欲目」
= Every crow thinks its own bird bonniest.
理性を失わせるものは、恋だけではありません。親の子に対する愛も、そうです。多くの親は子供を客観的に見ることができないのです。対象を見誤らせるものは、強すぎる愛と、近すぎる距離です。一心同体の親子には、距離は皆無です。日本のコトワザにも、「親馬鹿」「親の欲目」「親のひいき目」「親に目なし」などがあります。
(a) The owl thinks her own young fairest.《フクロウは自分の子が一番美しいと思っている》
(b) It is a wise father that knows his own
child.《自分の子供を知っているのはよほど賢い父親》
別掲 → 教訓8 近くにあるものは見えにくい。
教訓 256. 結婚はすばらしい愛の結実。
Love is a flower which turns into fruit at
marriage.《愛は結婚で実を結ぶ花である》
結婚はすばらしいものです。よき妻は宝です。妻のない男は男としての価値がないと、コトワザは言います。
(a) A good wife is a good prize.《よい妻はよい宝》
(b) A good wife and health is a man's best
wealth.《よき妻と健康は男の最善の財産である》
(c) A man without a wife is but half a man.《妻のない男は男として半人前》
教訓 257. 不幸な結婚は愛の墓場。
Marriage is the tomb of love.《結婚は愛の墓場である》
結婚がうまくいかなければ、いつまでも不幸です。不幸な結婚はしない方がましです。
(a) An ill-marriage is a spring of ill fortune.《悪い結婚は不幸の源泉である》「悪妻は百年の不作」
(b) Better be still single than ill married.《結婚して不幸になるより独身でいた方がよい》
見出しのコトワザのように、結婚が「墓場」だといわれるのは、そのような不幸な結婚のことをいっているのでしょう。
教訓 258. 家庭は自由を束縛する。
He that hath wife and children hath given
hostages to fortune.[Francis Bacon] 《妻子あるものは、運命に人質を取られたようなもの》
このコトワザによれば、家庭をもつことは自由の喪失を意味します。家庭だけではありません。友人などもいない方が仕事はしやすいし、出世も早いのです。
(a) He travels fastest who travels alone.[Rudyard
Kipling]《一人で旅する人が一番速く旅をする》(家族や親類などの係累は出世の邪魔)
いずれにしても、家庭をもつことは自由の束縛になります。次のコトワザは、それは「監禁」だといいます。
(b) Wedlock is a padlock.《結婚は監禁である》
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