知識と経験の必要性を教える


教訓 172. 知識は力である。


A wise man never wants a weapon.《賢者は武器に不足しない》


 しかし、この社会で生きていくかぎり、知識は無用の長物どころか、競争を生き抜くための必要欠くべからざるものです。愚者には知識という武器がありませんが、賢者にはそれがあります。そこで、コトワザは知識が大きな力であることを認めないわけにはいきません。

(a) Knowledge is power.《知識は力である》
(b) Wisdom is better than strength (or force).《知恵は力にまさる》

 そして、人間は世の中のさまざまなことを知れば知るほど、自分がいかにものを知らないかに気づきます。自分の無知や愚行を知るのは、賢者の証拠です。

(c) It is a great point of wisdom to find out one's own folly.《自分の愚行を知るのは知恵の利点である》
(d) The less wit a man has, the less he knows that he wants it.《知恵が少ないものほど、おのれの知恵の不足に気づかない》

 病気についても、知識は不可欠です。病気の原因を知らずに、病気を直すことはできません。病気の原因を知るのは、治療の第一歩です。

(e) A disease known is half cured.《病気がわかれば半分治ったも同然》「病を知れば癒ゆるに近し」
          別掲 → 教訓217 原因のない結果はない。
= To know the disease is half the cure.

 また、知識を得る過程には目に見えない苦しみがありますが、しかし一度知識を手に入れてしまえば、人はその果実のもたらす醍醐味を永久に享受することができるのです。

(f) Knowledge has bitter roots but sweet fruits.《知識の根は苦いが、その実は甘い》


教訓 173. 十分な知識と経験がないと危険である。


Zeal without knowledge is a runaway horse.《知識のない熱意は放れ駒も同然》
          別掲 → 教訓93 求める心だけではことは成就しない。


 人はよく、情熱や意欲が重要であることを力説します。しかしそれらのものは、経験や知識の裏付けがあって初めて完全なものになることができます。経験や知識のない情熱や意欲は、分別や慎重さを欠き、かえって危険です。論語にいう「思いて学ばざれば則ち殆うし」も、これに近い意味でしょう。

(a) Fools rush in where angels fear to tread.[Alexander Pope]《天使が踏み込むのを恐れる場所へ愚者は飛び込む》

 また、知識や経験が生半可なものであれば、これも危険です。知恵を身につけようとするものは、完璧を期さなくてはなりません。

(b) A little learning is a dangerous thing.[Alexander Pope]《わずかばかりの学問はかえって危険である》「生兵法は怪我のもと」
          別掲 → 教訓33 小さなものにも危険なものがある。
          別掲 → 教訓81 目的にふさわしい方法を用いよ。

 次のコトワザは、無知なるが故に法を犯す危険を指摘します。法を破った後、知らなかったではすまされません。無知は罪の免責にはならないのです。

(c) Ignorance of the law is no excuse for breaking it.《法律の無知はそれを破ってよい口実にはならない》
 = Ignorance of the law excuses no man.


教訓 174. 賢者は一を聞いて十を悟る。


A word is enough to the wise.《賢者には一言で足りる》「一を聞いて十を知る」
 = A word to the wise is sufficient (or enough).
          別掲 → 教訓41 部分から全体がわかる。


 知恵あるものの理解のす早さは、コトワザの推奨の的になります。やはり、知恵者にはかなわないというのが、見出しのコトワザです。

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