悪を防ぐ奇策を教える


教訓 165. 悪人にさらなる悪の機会を与えよ。


Give a thief enough rope and he'll hang himself.《盗人にロープを十分に与えよ、そうすれば自分を縛る》


 悪を防ぐには、まず悪の生まれる原因を探らなければなりません。コトワザは、人間が悪の道に走るのはそうさせる機会や状況があるからだとします。

(a) The hole calls the thief.《抜け穴が泥棒を呼び込む》
(b) An open door may tempt a saint.《開いている扉は聖人をも誘惑する》
(c) Opportunity makes the thief.《盗む機会があるから盗人が生まれる》

 常識的な発想からすれば、悪の機会をなくすることが悪を防ぐことです。しかし見出しのコトワザは、悪人に悪を行う機会をさらに与えよといいます。そうすれば、悪事の露見する機会が増え、悪人はおのずと身を滅ぼすからです。これは、悪を奨励することによって悪を防止するという奇策です。このような奇策を、コトワザは次のようにいくつか用意しています。


教訓 166. 悪を知る悪人に悪を退治させよ。


Set a thief to catch a thief.《泥棒に泥棒を捕らえさせよ》「毒を以て毒を制す」


 日本には「己を以て人を量る」というコトワザがありますが、これは悪人にも当てはまります。悪人の場合は「下衆の勘繰り」という方がよいのかもしれません。悪人には、人間がみな悪人に見えるのです。

(a) The thief thinks all people like himself.《盗人は他人はみな自分と同じ盗人だと思っている》

 つまり、悪は悪を知っているのです。「蛇の道は蛇」です。それゆえに悪を退治するのに悪を用いるのがもっとも有効です。見出しのコトワザのいうように、「毒をもって毒を制す」るのです。

(b) The wolf knows what the ill heart (or beast) thinks.《狼は悪い心(獣)の考えることを知っている》
(c) An old poacher makes the best keeper.《老練な密猟者が最善の監視人になる》
(d) The smell of garlic takes away the smell of onions.《ニンニクの臭いはタマネギの臭いを消す》


教訓 167. 強者には強者をあたらせよ。


Diamond cut (or cuts) diamond.《ダイヤモンドでダイヤモンドを切る》


 同じもの同士を争わせよという発想は、悪にかぎりません。力の拮抗するものが二人寄ると、「両雄並び立たず」ですが、コトワザはこのような事情を利用して、強敵には強敵を当たらせるのがよいといいます。見出しのコトワザは、強敵同士の組み合わせは、結果としてどちらも傷つくという意味のものです。

(a) When Greek meets Greek, then comes the tug of war.《両雄が出会えば決戦が起こる》
           別掲 → 教訓142 指導者は一人がよい。

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