2 指導と服従

 指導者について教える


教訓 141. 集団には指導者が必要である。


When the cat is away, the mice will play.《猫がいないとネズミがあばれる》「鬼の居ぬ間の洗濯」


 集団には、一定の力をもった指導者が必要です。権威ある指導者が不在だと、集団は群衆となって、好き勝手なことを始めます。そこで見出しのコトワザがあるのですが、これはまた、厳しすぎる指導者に対して、人間は息抜きが必要だという意味でも用いられます。

 指導者のいない群衆は、暴徒と化します。暴徒に理不尽に支配されるくらいなら、自分が支配者になる方がましだというのが、次のコトワザです。

(a) Better to rule than be ruled by the rout.《暴徒に支配されるくらいなら自分で支配した方がよい》


教訓 142. 指導者は一人がよい。


Too many cooks spoil the broth.《料理人が多すぎるとスープの味がだめになる》「船頭多くして船山に登る」
          別掲 → 教訓68 極端は悪である。
          別掲 → 教訓86 一つの仕事を二人以上でするな。
          別掲 → 教訓133 多人数のグループはまとまりにくい。

 いずれにしても、集団には指導者が必要です。だから、どのようなグループにあっても、とかく人は上に立ちたがるものです。その結果、指導者が何人もできると、その集団はうまく機能しなくなり、仕事もはかどらなくなります。見出しのコトワザのほか、次のものもそのことをいいます。

(a) Too many chiefs, not enough Indians.《酋長が多すぎ、インディアンが足りない》

 また、二人以上のものがどちらも同じ指導者の位置につこうとすると「両雄並び立たず」で、いさかいが起こります。いさかいを避けるためには、どうしても序列が必要になり、指導者を一人にしなければなりません。

(b) When Greek meets Greek, then comes the tug of war.《両雄が出会えば決戦が起こる》
          別掲 → 教訓167 強者には強者をあたらせよ。
(c) If two men ride on a horse, one must ride behind.《二人で一頭の馬に乗るとすれば、一人は後ろに乗らなければならない》

 さらに、指導者として責任をもって仕事をしているものに、端から口出ししてはいけません。とくに、海が静かなときには、だれでも水先案内をつとめたがりますが、嵐はいつ来るかもしれないのです。なぎのときでも、嵐を乗り切る自信のあるものだけが、水先案内をつとめるべきです。

(d) Don't speak to the man at the wheel.《舵輪を握るものに口出しするな》
(e) In a calm sea every man is a pilot.《凪の海ではだれでも水先案内がつとまる》(平和時の指導はやさしい)


教訓 143. 指導者にはその資格が必要である。


If one sheep leaps over the ditch, all the rest will follow. 《羊が一匹溝を飛び越せば、残りはみんなついていく》


 指導者にはそれなりの資格がいります。まず、見出しのコトワザのように率先垂範の能力です。先頭に立つものが範を垂れてこそ、集団は後にしたがうものです。

 次に、指導者たるもの、先見の明をもたなくてはなりません。さもないと、集団は過ちを犯すことになります。

(a) If the blind lead the blind, both shall fall into the ditch.[Matthew]《盲人が盲人の手を引いていけば、二人とも溝に落ちる》

 さらに、指導者たるものは、財政力をもたなくてはなりません。出費を負担するものにだけ、命令権や発言権があります。金を出さずに口だけ出すのは、慎まなければなりません。

(b) He who pays the piper calls the tune.《金を払うものが笛吹きに曲を指示できる》

 最後に、指導者たるものは部下を信頼し、部下に仕事を任せなければなりません。

(c) Why keep a dog and bark yourself?《犬を飼いながらなぜ自分で吠えるのか》
 = I will not keep a dog and bark myself.



教訓 144. 指導者の絶対的権力は危険である。


Absolute power corrupts absolutely.《絶対的権力は絶対に腐敗する》


 人は権力をもつと、腐敗するものです。見出しのコトワザは、「絶対」を反復するレトリックの力を借りて、権力の危険を印象づけようとします。

 権力の恐ろしさは、権力をもつ指導者に対してその意向に反することがいえないことにあると、次のコトワザはいいます。

(a) If the master say the cow is white the servant must not say 'tis black.《牛が白いと主人がいえば、召し使いは牛が黒いとはいえない》「長い物には巻かれろ」

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