第4章 人間の社会

1 交友と友人

 交友と団結について教える


教訓 128. 同じもの同士は自然に集まるもの。


Birds of a feather flock together.《同じ羽の鳥は群をなす》「類は友を呼ぶ」


 性格、気質、趣味などを同じくするものは、自然に寄り合います。よい上司にはよい部下が集まり、悪い上司には悪い部下が群がります。また、志を同じくするものも相つどいます。政治家は、同じ目的をもつもの同士が党や派閥に結集します。

(a) Like will to like.《似たもの同志が集まる》
(b) Like attracts like.《似たものは似たものを引き寄せる》「同気相求む」
(c) Every Jack has (or must have) his Jill.《どんなジャックにもジルがいる》「割れ鍋に綴じ蓋」
(d) Politics makes strange bedfellows.《政治は奇妙な同衾者を仕立てる》

(d)は、気心の知れないものでも、目的が同じだと仲間になることを皮肉ったコトワザです。

 日本のコトワザでは、すぐれた主人にすぐれた部下がいると、「この主人にしてこの家来あり」といい、だらしない主人にだらしない部下ができると「主が主なら家来も家来」といいます。しかし英語のコトワザの場合は、同じような組み合わせを評して、よい意味にも悪い意味にも使うようです。

(e) Like master, like man.《主人と部下は似たもの》「この主人にしてこの家来あり」「主が主なら家来も家来」


教訓 129. 人は仲間から影響を受ける。


A man is known by the company he keeps.《人は交わる友によって知られる》
 = A man is known by his friends.


 生来、同じ気質をもったものが集まる場合も多いのですが、同時に、集まったものがお互いに影響を与え合うこともあります。だから、人を知るにはその交友関係を見ればよいということになります。

 男女のペアも同じです。次のコトワザは、男がよければ女もよくなるし、妻がよければ夫もよくなるといいます。

(a) A good Jack makes a good Jill.《女は男次第》
 = A good husband makes a good wife.《妻は夫次第》
(b) A good wife makes a good husband.《夫は妻次第》「男は妻(め)から」


訓 130. 悪い仲間からは悪い影響を受ける。


The rotten apple injures its neighbor.《腐ったリンゴは傍らのリンゴを腐らせる》「一桃腐りて百桃損ず」


 しかし、家族や組織など同じようなものからなるグループにも、ときどきはみ出しものがいます。

(a) There is a black sheep in every flock.《どの群にも黒い羊がいる》

 善良な仲間からなるグループの中に、ワルが一人いると周囲にすぐに影響し、全体が悪くなるものです。悪人とつき合うためには、自分も悪くならなければならないからです。「朱に交われば赤くなる」のです。見出しのコトワザや次のものは、そういう意味で用いられます。

(b) He that toucheth pitch shall be defiled.《瀝青に触れるものは汚れる》「朱に交われば赤くなる」
(c) Who keeps company with the wolf will learn to howl.《狼と付き合うものは吠えることを覚える》
(d) If you lie down with dogs, you will get up with fleas.《犬と一緒に寝れば、ノミと一緒に起きることになる》
(e) He should have a long spoon that sups with the devil.《悪魔と食事するものは、長いスプーンを使え》(ずるい奴にはずるくしなければならない)


教訓 131. 孤高を愛する賢者は悪に染まらない。


Better be alone than bad company.《悪い仲間といるよりは一人でいる方がよい》


 「とかくメダカは群れたがる」とは昭和の女流作家、平林たい子の名言ですが、小人物は一人でいることが寂しいのでしょうか、なにかと徒党を組みたがるものです。しかし、読書や思索を好む賢者は、無数の先哲を友とするだけに、一人でいる方がむしろ楽しいのです。

(a) A wise man is never less alone than when alone.《賢者は一人だけのときが一番寂しさを感じない》

 太陽は、正邪の区別なく万人を照らします。悪を照らしても、太陽は常に偉大なる太陽です。聖人君子も、悪人の中に入りこみ、彼らを教え導きます。悪人に接しても、聖人君子はそれによっていささかもおのれを汚すことはありません。

(b) The sun is never the worse for shining on a dunghill.《汚物を照らしても太陽は太陽である》

 人はだれであれ、いかなる悪に出会っても動ずることなく、おのれの信ずる正しい道を進みたいものです。


教訓 132. 社会的な活動には最低二人が必要。


It takes two to make a bargain.《取引をするには二人必要》


 さて、人間は社会的存在ですから、何をするにも一人では困難なのです。社会構成の最小単位として、少なくとも二人は必要です。そして、二人の間にはなんらかの協力が必要になり、責任も分担すべきです。また、けんかのような協力関係を破壊する行為にも、やはり相手が必要です。相手が応じなければ、けんかにはならないからです。

(a) It takes two to tango.《タンゴを踊るには二人必要》
(b) It takes two to make a quarrel.《けんかには二人が必要》


教訓 133. 多人数のグループはまとまりにくい。


Two is company, three is a crowd (or none).《二人では仲間、三人では群衆(仲間割れ)》


 しかし、二人のときは、ときどき口げんかがあるぐらいで、だいたいがうまくいくのは夫婦を見ればわかります。ところが、二人以上になると、それまでうまくいっていた人間関係も、ギクシャクし始めます。仲良しの二人にもう一人が加われば、三角関係になるからです。まだわれわれの記憶に新しいのですが、故ダイアナ妃は離婚の前年の1995年11月、BBCテレビのインタビューで次のように語りました。

There was three of us in this marriage, so it was a bit crowded. [Princess Diana]《この結婚には三人いましたから、少し混みすぎです》

この気の利いた彼女の言葉は、おそらく見出しのコトワザが下敷きになっているものと思われます。

 共同でする仕事も、多人数になればなるほど、うまくいかなくなるものです。

(a) Birds in their little nests agree.[Isaac Watts]《せまい巣にいる鳥たちは仲がよい》
(b) Too many cooks spoil the broth.《料理人が多すぎるとスープの味がだめになる》「船頭多くして船山に上る」
          別掲 → 教訓86 一つの仕事を二人以上でするな。
          別掲 → 教訓68 極端は悪である。
          別掲 → 教訓142 指導者は一人がよい。

 大きな組織を機能的に運営するには、組織の一人一人に責任を分担させることでしょう。共同責任にすると、無責任になりがちです。

(c) Everybody's business is nobody's business.《みんなの仕事はだれの仕事でもない》

 さらに大きな集団になれば、仕事の推進だけでなく人間関係の維持の面でも、いっそう難しくなります。大きな組織では、お互いにしていることがわからなくなるし、大都会では、人間関係が希薄になり、孤独感だけが増します。次のコトワザは、それを指摘しています。

(d) The left hand doesn't know what the right hand is doing.《左手は右手のしていることを知らない》(大きな組織ではお互いのことを知らなくなる)
(e) Half the world knows not how the other half lives.《世間の半分は残りの半分の生活を知らない》
(f) A great city, a great solitude.《大きな町には大きな孤独がある》

これらのコトワザは、小さな仲間はよくまとまるが、大きくなると連帯感を失って互いに無関心な群衆になることを述べています。


教訓 134. 団結すると強いが、分裂すると弱い。


In unity there is strength.《団結には力がある》


 集団の強さはその団結にあります。反目したり、分裂したりして団結を崩すと、それまで強かった集団もとたんに弱くなります。

(a) Union is strength.《団結は力》
(b) United we stand, divided we fall.《団結すれば立ち、分裂すれば倒れる》
(c) A house divided against itself cannot stand.[Mark]《ばらばらになった家庭は立ちゆかない》

 兵法者はそのことを心得ています。勝利を得るためには、敵が団結しないように、仲間同士争わせよといいます。

(d) Divide and conquer.《分裂させて征服せよ》
(e) Divide and rule.《分割して統治せよ》

 また、悪人が仲間割れをすると、悪の実行ができなくなるのです。その結果、喜ぶのは善人です。

(f) When thieves fall out, honest men come by their own.《泥棒が仲間割れすると、正直者は持ち物を盗まれない》


教訓 135. 集団をまとめる知恵はいろいろある。


The family that prays together stays together.《ともに祈る家族はいつまでも別れない》


 集団は自らを維持するための知恵を必要とします。コトワザはそのための方法をいくつか説いていますが、一つは見出しのいうように、宗教です。

 団結にはまた、相互の信頼関係が不可欠です。そのためには、お互いが友愛と仁義で結ばれていなくてはなりません。一片の人情の披歴が、人の親近感を呼び、人々を結束させます。とくに仁義は、集団維持の要です。悪人とて、その例外ではありません。

(a) One touch of nature makes the whole world kin.《一片の人情が世の中を親密にさせる》
(b) There is honor among thieves.「盗人にも仁義あり」
(c) Dog does not eat dog.《犬は犬を食わない》「悪獣もなおその類を思う」

 次は、秘密厳守です。家族の恥や仲間の秘密は、外に漏らしてはいけません。漏らせば、全体が恥ずかしい思いをしたり、罰を受けたりします。集団は、自己防衛上、そのような秘密を売ってはいけないという掟をつくります。

(d) Don't wash your dirty linen in public.《汚れた下着を人前で洗うな》
(e) Don't tell tales out of school.《学校の中の話を外でするな》
(f) No names, no pack drill.《名前を出さなければ、軍規違反の罰もない》

(d)は家族の恥を人前にさらすな、(e)は学校仲間の内輪話を外へもらすな、(f)は軍隊では仲間の名をあげて告発するな、という意味でそれぞれ用います。

 とくに、地域の和を重んじたのは、封建制度の地縁社会でした。わが国もその例にもれず、日光東照宮には「見猿、聞か猿、言わ猿」の「三猿」が彫刻されていますが、これはお互いの弱点を言い触らすことをいましめる意味をもっていました。John Bartlett の Familiar Quotations によれば、その「三猿」Three Wise Monkeysの故事を借用して、イギリスでは次のコトワザができたといいます。

(g) See no evil, hear no evil, speak no evil.《悪を見ず、聞かず、言わず》

他人の罪や欠点をなどに対しては、目と耳と口をふさいだ三匹の猿のように賢く振る舞えば、地域の平和が保たれるという処世訓なのです。

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