5 時間と機会

 世の中での成功のためには、時間の使い方や機会の利用の仕方などが、大きな意味をもってきます。ここでは、そのようなコトワザを取り上げてみます。

 時間について教える


教訓 107. 時間は飛ぶように過ぎる。


Time flies.《時は飛び去る》「光陰矢の如し」
 = Time has wings.《時は翼をもつ》


 つかの間に時は過ぎ、知らないうちに時勢は変わります。まことに「光陰矢の如し」です。

(a) Times change.《時勢は変わる》
(b) Time and tide wait for no man.「歳月人を待たず」

 そして、人生は短く、極めるべき学問・芸術の道は長く、遠いのです。

(c) Life is short and time is swift.《人生は短く、時は過ぎやすい》
(d) Art is long, life is short.[Hippocrates]《学芸の道は長く、人生は短し》「少年老い易く学成り難し」「芸術は長く人生は短し」

(d)は、ART の解釈が変化してきたコトワザの例です。原義では「医術」を意味していたのですが、次第に「学問」一般を指していうようになり、「学問の修得には長時間を要するが人生は短い」という意味で用いられるようになりました。この意味はなお生きていますが、さらに今日では「芸術」の意味解釈も加わり、「芸術作品の寿命は長いが人生は短い」の意味でも用いられています。日本では、後者の意味で用いられることが多いようです。


教訓 108. 貴重な時間を有効に利用すべし。


Busiest men find the most time.《最も忙しい人が最も暇を見つける》


 時は貴重なものです。それは金銭と同じく、浪費すべきではありません。

(a) Time is money.「時は金なり」

 貴重な時間は不足するばかりですから、何とか工夫して生み出すように心がけなければなりません。工夫すれば、ある程度まで時間は発見できるものなのです。そこで見出しのことわざがあり、それと対をなす次のコトワザがあります。

(b) Idle folk have the least leisure.《不精ものが一番暇がない》

これらのコトワザは、逆説のように見えます。常識的に考えれば、多忙なものは時間がないし、不精ものは時間が余っているように思われるからです。しかし、少し裏から眺めれば、多忙なものは寸暇を惜しむが故に暇を見つけますが、不精ものは暇を見つける努力さえしませんし、暇のないことを働かないことの口実にさえします。つまり「忙しい人には暇がある」が、「不精ものには暇がない」のです。

 また、時間は貴重であるという考えから、だれにとっても時間厳守や几帳面さが必要であるとする、次のようなコトワザが生まれます。

(c) Punctuality is the politeness of kings.[Louis XVIII]《時間厳守は君主の礼節》
(d) Punctuality is the soul of business.《時間厳守は仕事の極意》

 社会生活では決まった時間に遅れることは悪いことですが、しかし遅れても不履行よりはましであるという、次のコトワザもあります。

(e) Better late than never.《遅れてもやらないよりはまし》
          別掲 → 教訓74 不十分でも無いよりはまし。

これは、より悪い状況との比較から、現状を肯定しようとするコトワザ特有の論理であり、前節「極端と中庸」で見た「不足礼賛」の知恵と同じものです。


教訓 109. 時間の経過は相対的である。


Pleasant hours flay fast.《楽しい時はすぐに過ぎ去る》


 時間は同じ早さで過ぎていきますが、しかしその中で生きる人間にとっては、時間の経過は決して同じではありません。楽しい時間はすぐに過ぎ去りますが、苦しい時間はなかなか過ぎ去らないし、待ち望む時間もなかなかやって来ません。このような時間の相対性に、コトワザは早くから気づいています。

(a) A watched pan (or pot) never boils.《見つめるナベは煮え立たない》
          教訓15 将来の期待はなかなか実現しない。
(b) For the busy man time passes quickly.《忙しい人には時間が早く過ぎ去る》

 退屈な長旅も、道連れがあると案外時間が早く過ぎ、短く感じられます。遠い道のりでも、下手に近道をして危険を招くよりは、道連れをつくって時間のたつのを忘れた方がよい、というのがコトワザの知恵です。

(c) Good company on the road is the shortest cut.《楽しい道連れのあるのが一番の近道》「旅は道連れ」
(d) A merry companion is a wagon in the way.《陽気な道連れは道中の馬車》「旅は道連れ」


教訓 110. 過去の話をむし返すな。


Harp not for ever on the same string.《竪琴の同じ弦をいつまでも弾くな》


 また、人は過ぎ去った時間を懐かしみ、追憶にふけりがちなものですが、この傾向は老人になるほど強まります。これらのコトワザは、これに警告を発し、古い話をいつまでも繰り返すなといいます。

(a) Don't take your harp to the party.《人の集まりにいつも同じ竪琴をもっていくな》
(b) It is useless to flog a dead horse.《死んだ馬をむち打っても無駄だ》(過去の話を蒸し返すな)
(c) Queen Anne is dead.《アン女王が死んだって》

(c)は古いニュースを得意気に話す相手に対し、それはアン女王の死を報じるようなカビの生えたニュースであると、からかいを込めて投げかけた返答です。


教訓 111. 時間は過去を忘れさせてくれる。


Time is the great healer.《時間は偉大な治療師である》


 時間は、人間の意志にかかわりなく過ぎ去ります。そして、すべてを解決してくれます。昔の苦しみや怨みも、現在の心配も、時間がたてば一切を忘れることができるのです。

(a) Time cures every disease.《時間はすべての病気をいやす》
(b) Let the dead bury the dead.[Matthew]《死者をして死者を葬らしめよ》
(c) Let bygones be bygones.《過去をして過去たらしめよ》「既往は咎めず」
          別掲 → 教訓225 敵を許し、過去を水に流せ。

 過去の屈辱だけではありません。昔日の栄光も過ぎたものとしてともに葬るのがよいのです。過ぎ去ってみれば、喜びも苦しみもみな同じになります。

(d) One cannot put back the clock.《時計は逆には戻せない》(何時までも過去の栄光を懐かしむな)
(e) It will be all the same a hundred years hence.《100年たてばみな同じだ》

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