遠くのものの不利について教える


教訓  14. 遠ざかるものは忘れられる。


Out of sight, out of mind.《見えなくなるものは忘れられる》「去る者は日々に疎し」


 さて、人は遠くのものに憧れを抱く一方、いかに好ましい人、大切な人でも、遠くへいけば、次第に心の中からも遠ざかるものです。「去るもの日々に疎し」に相当するいくつかのコトワザがあります。これらのものは、そのような人間心理を説明するものとして、また愛する人に去られた悲しみの心を慰めるものとして、人口に膾炙してきたコトワザです。

(a) Far from eye, far from heart.《目から遠ざかるものは心からも遠ざかる》
(b) Seldom seen, soon forgotten.《あまり会わないとすぐに忘れられる》
(c) Long absence alters affection.《長い別離は愛情を変える》

 そして、遠くにいるものは、ただ忘れられるだけではありません。「欠席裁判」という言葉があるように、その場にいないというだけで、悪者にされてしまうこともあるのです。

(d) The absent are always in the wrong.《不在のものがいつも悪者にされる》

これは、何かもめ事があったような場合、目の前にいないものにその責任を負わせる方が無難だからですが、とにかくその場にいないのが不利になるのは当然でしょう。


教訓  15. 将来の期待はなかなか実現しない。


A watched pan (or pot) never boils.《見つめるなべは煮え立たない》「待つ身は長い」
  別掲 → 教訓109 時間の経過は相対的である。


 期待することは楽しいことですが、その反面、待ちこがれることはなかなかやって来ず、「待つ身は長い」のです。それに「好事魔多し」で、予想には必ず邪魔が入り、そんなにうまくいかないことを、次のコトワザは教えてくれます。

(a) Nothing is so certain as the unexpected.《予想外なことほど確実にやってくるものはない》
(b) It is the unexpected that always happens.《必ず生じるのは予期しないことだ》
(c) Hope deferred maketh the heart sick.[Proverbs]《望みを達するのが遅くなると心は重くなる》
 = Hope delayed afflicts the heart.
(d) The grapes are sour.[Aesop]《あのブドウは酸っぱい》「負け惜しみの減らず口」
 = The sour grapes.《酸っぱいブドウ》

(a)(b)では、予想外のことは必ず起きるので、何ごとも期待通りには実現しないことをいい、(c)は期待の実現が遅れると欲求不満が高じるということをいっています。さらに(d)では、イソップがキツネにいわせたように、手に入らないと知ると「あのブドウは酸っぱい」と、負け惜しみの一つもぶつけたくなるのが人間心理だということがわかります。

 ここまで見てくると、やはり「近くにあるものが一番よい」という、最初の出発点になった現実肯定のコトワザの価値が、あらためてクローズアップされてくるように思われます。

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