「形から心へ」
          ー東奔西走ー                安藤 邦男

                    「たまみず」22号 愛知県立昭和高等学校PTA会報
                                      昭和60年 7月19日


▼管理教育への批判がマスコミではかまびすしい。とくにやり玉にあげられるのは、新設校での生徒指導の厳しさである。いわく、「個性を押しつぶす集団訓練」、「心を無視した形だけの生活指導」等々。むろんあまりにも形式主義的なしつけ指導によって、個性や心が損なわれることはあるだろう。教師として、自戒すべきは当然である。しかし、だからといって、「形から入るしつけ教育」が間違っているというのは、教育そのものの否定ではなかろうか

▼しつけ教育の一つにあいさつの励行がある。だがここにも、管理教育批判の影響があって、形だけのあいさつの奨励は意味がない、とする意見がある。もっともらしく思えるだけに、これほどミスリーディングな考えもない。それは、心が大切と思わせて、実は本来一体であるべき心と形を、別個のものとして分離するだけでなく、二つはそもそも相容れないものという、誤った考えを前提にするからである

▼あいさつは形であるが、同時に心でもある。朝の出会いにあいさつされて、悪い気のするものはいない。反対に、知らぬ顔の半兵衛では、面白くなかろう。それが人情というものだ

▼形がなければ、心は伝わらない。愛の心は、形に表してこそ伝わるし、また深まりもする。形とは表すものである。それは行為であり、実践である

▼この「形から心へ」という道こそ、日本古来の武道や芸道の伝統でもある。これはしつけ教育の方法として、もっと見直すべきではなかろうか。

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