『ことばの社会学』について         安藤 邦男

         ー『ことばの社会学』鈴木孝夫著(新潮文庫)ー
                  「白穹」 名古屋経済大学・市邨学園短期大学 図書館報23号
                                             平成 4年 4月

 飛行機事故で死者が出れば、わが国のマスコミは一刻を争ってその名前を報道する。しかし欧米では、死者の名前は家族や関係者にだけしか知らされない。ある人がある場所で、ある時刻に、ある飛行機に乗ったことは、彼のプライバシーであって、公表すべきことではないとされている。

 わが国では当然とされながら、外国ではそうでない事例をいくつか挙げながら、著者は日本が国際化するにつれて生じるであろう問題点を指摘し、その解決の方向を示唆する。

 著者は著名な言語学者であるが、論じるところは本書の題名が示すように、単なる言葉の領域を越え、言葉を生みだした背後の文化や社会にまで及んでいる。

 この書の後半で著者がとくに力を入れて追求するのは、国際化社会における日本人および日本語のいわば「言語戦略」である。著者は「国際化」を、@「征服・植民型」、A「自己植民型、B「相互依存型」という三つのパターンに分けて考える。日本の場合、アジアに見られるような「征服・植民型」の国際化でなかったが、先進国を手本として追随する「自己植民型」のそれてあったとする。

 しかし、これからは「相互依存型」を目指して、科学技術の分野だけでなく、言葉を含めて日本文化を世界に広める「輸出型国際化」へと転換すべきであるとして、言語教育に関するいくつかの具体策を提言している、みなさんにもぜひ一読をすすめたい、刺激的な啓発の書である。

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