教訓 183. 学問より経験がまさる。


An ounce of mother wit is worth a pound of learning.《1オンスの母の知恵は1ポンドの学識に匹敵する》


 コトワザには、学問より経験の効用を説くものの方が多いようです。それは、イギリスが経験主義哲学の伝統国であるという事情にもよるでしょうが、そもそもコトワザは、机上の学問より実地の経験を重んじるからでしょう。mother wit 《母の知恵》とは「父祖伝来の知恵」のことで、この方が、当然、学問より価値があることになります。

(a) An ounce of common sense is worth a pound of theory.《1オンスの常識は1ポンドの学説に匹敵する》

伝統的知恵や常識は、実践に裏付けられた知識であり、単なる机上の空論ではありません。それゆえ、凡百の学説よりまさるのです。

(b) Experience without learning is better than learning without experience.《学問なき経験は経験なき学問にまさる》

 経験が知識と違っているのは、自分の肌で痛みを経て入手した知恵であるという点です。痛みを通して得た知識は、終生忘れることはありません。

(c) Only the wearer knows where the shoe pinches.《靴のどの場所が痛むのかは、履いているものしかわからない》

これは、苦労は他人にはわからない、という意味でも用います。

 次のものも、同じように、苦痛を味わったものにしか、苦痛の何たるかはわからないと言います。

(d) What you’ve never had you never miss.《手に入れたことのない物には無くして惜しい気持ちは生じない》
  = You cannot lose what you never had.《手に入れていない物は無くすことができない》

 辛い経験をすると、人はだれでも用心深くなり、「羮(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」ものです。二度とそんな経験をしたくないからです。

(e) A (or The) burnt child dreads the fire.《やけどした子供は火を恐れる》「羮に懲りて膾を吹く」
(f) He that has been bitten by a serpent is afraid of a rope.《蛇に噛まれたものは縄を恐れる》
(g) Once bitten, twice shy.《一度噛まれると二度目には憶病になる》
(h) Failure teaches success. 「失敗は成功のもと」
          別掲 → 教訓62  現在の不幸は将来の幸福をもたらす。
(i) A stumble might prevent a fall.《つまずきは転倒を防ぐ》

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