教訓 94. 意欲や願望がすべてよいとはかぎらない。


Necessity has (or knows) no law.《必要の前に法律なし》「背に腹は代えられぬ」


 意欲や願望は、必ずしもすべてよいとはかぎりません。とくに人間の本能に根ざした願望には、むしろ悪いものが多いのです。何かを欲しいとか、是が非でもしたいとか思う気持ちが高じると、やがて法律さえ無視することになりかねません。悪いと知りながらも、してしまうのが人間です。

(a) Needs must when the devil drives.《悪魔に駆り立てられると、せずにはいられない》

その意味では、人間はエゴイズムの固まりかもしれません。みんなわが身が可愛いのです。

(b) Every miller draws water to his own mill. 《粉屋はみな自分の水車に水を引くもの》「我田引水」

 自分の願望のまま動くものを、我がままものといいます。やがては、不幸の原因をつくります。

(c) A willful man will have his own way.《わがままものは自分のしたいようにするもの》「這っても黒豆」
(d) Will is the cause of woe.《願望は悲哀の原因である》

 また、欲望も度を超すと、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」となり、すべてを失うことになります。

(e) Kill not the goose that lays the golden eggs.[Aesop]《金の卵を生むガチョウを殺すな》

いうまでもなくこの話は、一日一個の金の卵以上を望んでガチョウの腹を割き、元も子も失ったというイソップ物語から出ています。すでに得ている利益以上を望むと、何も得ることができないという、貪欲のいましめです。

 だから、願望や欲望は少ない方が幸せだともいえます。日本でも、「足を知る者は富む」といいます。

(f) He is rich that has few wants.《欲しいものが少ないものこそ、豊かである》「足を知る者は富む」

 また、たとえ願望や意欲が崇高な善意のものであるとしても、世の中にはそれを利用しようとする人たちがいます。善意の当人はほかのものから過重に使われ、結果的に損をすることにもなるのです。

(g) All lay loads on a willing horse.《進んで働く馬には、だれでも重荷を背負わせる》

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