教訓 71. 人間には節度が必要である。


One must draw the line somewhere.《どこかに一線を画さなくてはならない》


 英語のコトワザには中庸を説くものが断然多いのですが、それは人間が限界を知らない欲望の誘惑に屈し、その犠牲になりやすいからです。人間の弱さを知るコトワザは、自らの欲望に限界を設け、自己を律しなければならないと説きます。次のものは、節度の限界を越えると、命取りになるといいます。

(a) The last straw breaks the camel's back.《最後のわら一本がラクダの背中を折る》

 = It is the last straw that breaks the camel’s back
          別掲 → 教訓34 小さな危険はやがて大きな危険になる。
(b) The last drop makes the cup run over.《最後の一滴がコップをあふれさせる》
(c) Patience provoked turns to fury.《我慢を刺激すると激怒に変わる》
           別掲 → 教訓 3 ものは正反対のものに変化する。

 そして、両極を切り捨てた中道を進むならば、何ごとも安全であり、うまくいきます。

(d) Safety lies in the middle course.《安全は中道にある》
          別掲 → 教訓124 近道は危険、中道を歩め。
(e) Moderation in all things.《万事に中庸を》
(f) Virtue is found in the middle.《美徳は中庸にある》
(g) The golden mean is best.[Horace]《黄金の中庸が最善である》
(h)
There is measure in all things.《あらゆるものには節度というものがある》
(i) Great minds think alike.《偉大な人の考えは同じ》(同じように考えた相手を冗談めかして褒める)

 以上はいずれも、中庸が大切であることを抽象的に説くコトワザですが、次のものはもっと具体的にその方法を示しています。

(j) Of thy sorrow be not too sad, of thy joy be not too glad.《悲しみをあまり悲しむな、喜びをあまり喜ぶな》「失意泰然得意淡然」
(k) Fools ask questions that wise men cannot answer.《愚者は賢者が答えられない質問をする》(場違いな質問をするな)
(l) Enough is as good as a feast.《十分というのがご馳走である》
(m) A contented mind is a perpetual feast.《満足は永遠のご馳走である》「足るを知る者は富む」
(n) More than enough is too much.《十分以上は多すぎる》「過ぎたるは猶及ばざるが如し」
(o) Temperance is the best physic.《節制が最良の薬である》「腹八分目に医者いらず」
                 
(j)は極端に悲しんだり喜んだりすることをいましめ、(k)は質問にも限度があるとたしなめ、(l)〜(o)は適量が一番のご馳走、過度はありがた迷惑だし、心身にもよくないことを述べています。

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