教訓 65. ぬか喜びをするな。


Don't count (or Count not) your chickens before they are hatched.《卵がかえらないうちにヒヨコの数を数えるな》「捕らぬ狸の皮算用」


 この人生では、先のことはどうなるかわからないのですから、たとえ期待が実現しそうであっても、その気になったり、先走って喜んだりしますと、失望に終わるのが落ちです。ぬか喜びをいましめるコトワザは、次のように多くあります。

(a) First catch your hare.《まずウサギを捕ってからにせよ》
(b) Catch your bear before you sell its skin.《クマの皮を売る前にクマを捕らえよ》「捕らぬ狸の皮算用」
(c) Don't halloo till you are out of the wood.《森を出るまでは喜びの叫びをあげるな》
(d) Never spend your money before you have it.《金が手に入らないうちに金を使うな》
(e) Don't pour out the dirty water before you have clean.《きれいな水が手に入らないうちに、汚い水を捨てるな》
  = Don't throw out the dirty water until you have get in fresh
             別掲 → 教訓125 逃げ道を多くし、危険を分散せよ。
(f) There's many a slip between the cup and the lip.《茶碗を口にもっていくまでのわずかな間にも失敗はいくらでもある》「磯際で船を破る」


(f)はギリシャ神話の故事にちなんだもので、以下は Brewer's Dictionary of Phrase and Fable の中の説明によるものです。アルゴー船の舵手アンカイオスは、彼のブドウ畑から取れたぶどう酒を生きて味わうことはないという予言を、彼の奴隷から受けていました。しかし、ぶどう酒が出来上がったので、奴隷を呼んで予言の取り消しを求めると、奴隷は前掲のコトワザを口ずさみました。その瞬間、イノシシがブドウ畑を荒らしに現れたので、アンカイオスはぶどう酒の杯をその場に置き、イノシシ退治に出かけましたが、そのまま死んでしまい、結局、ぶどう酒は飲めなかったといいます。

 だから、人間の一生がどうなるかということや、ある人が幸福であったのか不幸であったのかということは、その人の死の瞬間までわからないのです。

(g) Call no man happy till he dies (or is dead).《だれでも死ぬまではその人を幸せだというな》

このようなおびただしい数の類義コトワザを見ていると、昔からいかに多くの人たちがさまざまな状況の中で、ぬか喜びに泣いてきたかが痛いようにわかります。

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