教訓  2. ものには対立する相手がある。


Every flow must have its ebb.《満ち潮には引き潮がつきもの》「満つれば欠く 」


 どのようなものにも矛盾する両面があるという考え方はさらに、すべてのものにはそれと対立する別の相手があるという見方を生み出します。幸には不幸、運には不運、善には悪、正には邪というように、すべてのものには対立物があります。この見方を自然現象に当てはめれば、次のようなコトワザになります。

(a) After a storm comes a calm.《嵐の後には凪がくる》「雨降って地固まる」
          別掲 → 教訓58 不幸の後には幸福が来る。
(b) After a calm comes a storm.《凪の後には嵐が来る》「嵐の前の静けさ」
          別掲 → 教訓63 人はいつ不幸になるかわからない。

 世の中の現象を単独のものとしてではなく、何ごとも相手があっての出来事として眺めるならば、苦労だけするものがいる一方で、労せずして利を得るものもいる事実に気づきます。すると、努力とその成果は必ずしも一致しないという、次のようなコトワザが生まれてきます。

(c) One man sows and another reaps.《一人が種を蒔いて、もう一人が刈り取る》
(d) One beats the bush, and another catches the birds.《一人が薮をたたいて追い出すと、もう一人が鳥を捕らえる》

 次のものは、一人の幸せがもう一人の不幸であり、その逆もまたあることをいいます。

(e)
One nail drives out another.《釘を一本打ち込めばもう一本の釘を追い出す》(木に打ち込まれた釘を新しい釘で反対側へ打ち出す工法のことをいう)
(f)
One love drives out another. .《一人の愛がもう一人の愛を追い出す》
(g) One position expels another. .《一人の地位がもう一人の地位を奪う》
(h) One man’s loss is another man’s gain.《ある人の損失は別の人の利益である》

 さらにまた、人は幸福の中にあるとしばしば不幸を忘れるものですが、日本語のコトワザが「苦あれば楽あり」とか「楽あれば苦あり」と説くように、英語のコトワザも苦と楽、または喜びと悲しみは相伴うものであることを教えます。

(i) There is no pleasure without pain.《苦しみを伴わない楽しみはない》「楽あれば苦あり」
(j) Joy and sorrow are next door neighbors.《喜びと悲しみは隣同士》

 自然に対しては人工があり、神に対しては人間があります。前者が後者よりすぐれているのはいうまでもありません。

(k) God made the country, and man made the town.《神は田園をつくり、人は都市をつくった》

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