コトワザこぼれ話(3)

天気コトワザと健康コトワザ


 天候と健康についてのコトワザは、それぞれが古老から伝えられた知恵として、人々の日常生活を支えてきました。しかし、これらのコトワザは、大半が個々の生活の知恵を文字通りに伝えるもので、一般的教訓を含んだものはあまり多くありません。ここにその一部を知恵の歴史的遺産として取り上げて紹介します。

1.天候について教えるコトワザ

 天気コトワザのうち一般的教訓を含んだものは、「教訓58 不幸の後には幸福が来る」で取り上げましたので、ここではそれ以外のものを少し紹介しておきましょう。

夕焼けは晴れの前兆、朝焼けは雨の前兆と、コトワザは教えます。

a. A red sky at night is the shepherd's delight.《夕焼けは羊飼いの喜び》
b. A red morning foretells a stormy day.《朝焼けは嵐の前兆》
c. If red the sun begins his race, expect that rain will flow apace.《太陽が赤く運行し始めたら、雨が近いと知れ》

 3月の始め、天候はしばしば荒れ模様ですが、少し辛抱すれば、3月終わりには穏やかな天気に恵まれるといいます。

d. March comes in like a lion, and goes out like a lamb.《3月はライオンのごとく来たりて、子羊のごとく去る》

 しかし、イギリスの寒さは厳しく、5月までは薄着になるなと用心を呼びかけます。

e. Cast not a clout till May be out.《5月が来るまでは冬服は脱ぐな》


2.健康について教えるコトワザ

 コトワザは、健康を維持する知恵を多くたくわえています。それは、健康が昔から人間の最大の関心事だからでしょうか。

a. Health is better than wealth.《健康は富にまさる》
            別掲 → 教訓153 金銭より大切なものがある。

 財産はむしろ、健康の敵であるのかもしれません。金に飽かせての飽食や贅沢三昧は、人の命を縮めるからです。健康はやはり清貧の暮らしと、摂生にあるといえます。「腹八分目に医者いらず」ということす。

b. Poverty is mother of health.《貧乏は健康の母》
c. Temperance is the best physic.《節制が最良の薬である》「腹八分目に医者いらず」
            別掲 → 教訓71 人間には節度が必要である。

 とくに、食べすぎは万病のもとであり、死に至る病であるというコトワザが多いのには驚きます。次のコトワザいずれも、「大食短命」を意味すものです。

d. Great eaters(Gluttons) dig their grave with their teeth.《大食漢は己の墓を歯で掘る》
e. Gluttony kills more than the sword.《大食は剣より多くの人の命を奪う》
f. Many dishes (make) many diseases.《大食は多病のもと》
g. More die by food than famine.《食べ物で死ぬ人の方が空腹で死ぬ人より多い》
h. Much meat, much malady.《大食らいすると病気も多い》
              別掲 → 教訓 68 極端は悪である。

 そのほか、病気の予防や手当についての知恵として、次のようなものがあります。

i. An apple a day keeps the doctor away.《一日一個のリンゴ、医者知らず》
j. Laugh and get fat.《笑って太れ》「笑う門には福来る」
k. Sleep is better than medicine.《睡眠は薬にまさる》
l. Feed a cold and starve a fever.《風邪には大食、熱には絶食》

                   ことわざこぼれ話目次へ 戻る