夢をくれた玩具たち 安藤邦男
子供のころから、珍しい玩具・器具類には目がなかった。それさえあれば、夢幻の世界にも飛翔できるし、スーパーマンにもなれる。だが、目くるめく初体験も繰りかえせば色褪せるもの。次々と品が変わるゆえんであった。
幼時、まず熱中したのは鏡。向こう側の世界は逆さま、そこにもうひとりの自分がいる。鏡は異境を覗く奇跡の天眼鏡だ。
それに飽きると、次いでのめり込んだのはルーペ。花のめしべの林立は魔法の森、小さなアリは巨大な怪獣。
蓄音器も、そのころの追憶にある。父の留守をねらって円盤をいじると、突然、大人の太いうなり声がー。箱のなかに誰かがいる! 後年、浪曲師の声と知る。
長じて、新しもの好きに転じる。電動タイプ、2眼レフ、1眼レフ、テープレコーダー、デジカメ、何でも人に先駆けて購入。
とりわけビデオ。冬のボーナスぜんぶをはたいた代物である。休日ともなると、重い撮影機を肩に載せ、バッテリーを妻や子供たちにもたせて、野外撮影。一再ならずNHKと間違われたのも、愉快な思い出か。
近くはパソコン。この万能の小箱とは、20数年の付き合いである。いまだに嵌っているのは、その変幻自在の用途のためだ。奇を求める私を飽きさせない。
次に私をとりこにする新製品は、多分ロボット。長生きしなくては・・・・。
(平成19年7月)
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