YT君の結婚式でのスピーチ 平成5年6月12日(土)

平成5年6月12日(土)3時10分〜 ミュゼ クレールにて

・ご紹介にあずかりました安藤でございます。ご指名頂きましたので、僭越ではございますが、一言ご挨拶申し上げます。

・YTさん、Kさん、ご結婚おめでとうございます。心からお喜び申し上げます。

・さて、わたしはYTさんが昭和高校に在学していた頃、そこの教師をしていたのですが、YTさんを直接教えるということはいたしませんでした。しかし、直接教えた生徒以上に、わたしはYTさんをよく知っていました。それだけでなく、お母さんの方もよく存じ上げていました。お母さんは教育熱心な方で、ずっと昭和高校のPTA役員をされており、学校へもたびたびおいでになりました。そんなわけで、親子ともどもT家の方とは知り合いであったので、それが縁で、本日ここに祝辞を申し上げることになった次第であります。

・ところで、わたしが教えてもいないYTさんを知るようになったのは、そこに一つのエピソードがあったからです。それをお話しすることが、YTさんの人柄の一面を語ることにもなるので、紹介させて頂きます。

・YTさんが卒業した昭和高校というのは、昔から単なる進学校、受験校ではなく、勉強以外にも体育や芸術科目にも力を入れるという、いわば人格の全面発達を目指す全人教育を行うということで、県下にも名高い高校でありました。そのような学校の特色が一番よく表れるのは、学校行事で、とくに秋に行われる学園祭でした。普通の学校が二日かせいぜい三日学園祭に当てるところを、昭和高校は確か五日間も学園祭に当てていました。その五日間は、文字どおり自由なお祭り騒ぎでした。

・ところが、どういう訳か、グループ・サウンドというのですか、ギターやエレキを中心にバンドを組んで自由に出演するということは、認められていませんでした。しかし、歌やギターの好きなものは、そういうことがやりたくてしようがない。そこで、「もっと自由に出演させてくれ」という要求を学校側に出してきました。しかし、生徒会の顧問の先生方は、頭が固いので、「それはダメだ」とはねつけてしまったのです。すると、生徒たちはおさまらない。要求を聞いてくれるまでは動かないといってですね、一部のものが校庭に座りこみを始めたのです。わたしは、当時昭和高校では教頭をやっていたので、学校側の窓口として、生徒たちの要求を聞いたり、生徒の代表と話し合ったり、あるいは職員会議を開いて先生方の意見を聞いたりして、やっと来年からはエレキギターを自由に認めるということで、決着しました。いうなれば、一種の学園騒動のようなものでした。

・ところがです、その騒動のときに、生徒たちの座り込みの現場や、教師側との話し合いの様子を、横からカメラに収めていた生徒がいたのです。わたしはあまり気にしなかったのですが、他の先生の中に、写真というのはあとに証拠が残るし、まずいんではないかという人がいて、どうも指導したようです。翌日その生徒はわたしのところへ写真のネガを持ってきました。それがYTさんでした。彼は自分のしたことは軽率であったと率直に謝りました。聞けば写真部にいて、写真をとることが趣味というんです。またギターも得意で、生徒たちの要求は自分もまったく同感だといいます。その悪びれない率直な態度に、わたしはすっかり好感を持って、それ以上は追求しませんでした。何年も前のことですから、記憶違いがあるかもしれませんが、それがYTさんとの出会いでした。

・さて、YTさんはこのエピソードからもお分かりのように、写真やったり、ギターバンドにはいって作詞・作曲したりするなかなかの芸術的気質を持った生徒でした。しかし、ただそれだけでなく、その後気をつけて見ておりますと、ワンゲル部にも所属し、休みになると鈴鹿の山を歩き回るという、健康で、活動的な一面も持った生徒でした。のみならず、成績の資料などを見ると学習成績も非常によい。いうなれば、全人教育を掲げる昭和高校の申し子とでもいうべき生徒でありました。

・ですから、大学入試についても、ガリ勉型の一般入試ではなく、いわゆる推薦入学の方を選びました。推薦入学というのは、第一に学業成績、第二に人物、第三にクラブ活動などにおける特技という、三拍子が揃わないと入学できません。YTさんは三つとも優れて良かったのですから、多くの希望者の中から選ばれて、見事に芝浦工大にパスしました。

・このように、何事にも積極的に取り組む姿勢が、後に大学時代になると、英語を身につけるために、カナダにホームステイするという積極的生き方に発展していきました。とかく、大学生になると勉強しない人が多い中で、YTさんはいつまでも成長続ける努力の人だといえます。

・そして驚くべきことに、この彼の成長は、知能面・精神面だけでなく、肉体面にもおよんでいます。高校時代はわりと小柄な生徒でしたが、久しぶりに会ってみると、かなり大きな若者に成長しているのですね。大学生になってから背が伸びているのです。人間、やはり「大器晩成」でないといけません。

・さて、最後に、心身ともに健康な、調和の取れた資質を持っておられるYTさん、どうかその豊かな資質を、新しい職場でも十分に生かして頂くとともに、またKさんと力を合わせて、幸せな家庭を築いていかれることを、心から念願して、お祝いのスピーチとさせて頂きます。

               終わり

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