市邨短大ゼミ卒業祝賀挨拶        平成5年3月17日(水)

 ご卒業おめでとうございます。2年というのは本当に速いものですね。あっという間の年月かもしれません。でもそれぞれのひとにとっては充実した思い出のいっぱい詰まった2年だと思います。

 さて、アメリカでは卒業式のことを commencemant といいます。コメンスという英語は、「始める」という意味だということはご存知のとおりです。多くのひとは新しく「OL生活を始める」でしょう。なかには、家業を手伝うひともいるでしょう。また、家庭で「花嫁修行を始める」ひともいるかもしれませんね。いずれにしてもみなさんの前には、これから60年、70年という長い人生が開けているのですが、みなさんはいまからその「人生を始める」ことになります。

「始める」という言葉は、いい言葉です。何かを始めるとき、ひとは目標をもち、それを達成しようという意欲をもち、それを達成したときの喜びを予感し、またそれに打ち込んでいる自分の姿に大きな生き甲斐を感じるものです。

 「始める」によくにた言葉に「始まる」があります。「始める」が、自分で能動的にことを行うのを意味するとすれば、「始まる」はだれか他のものが始めたことを自分は受け身のかたちでそれに従うという感じがします。「会社が始まる」「学校が始まる」「映画が始まる」など、みなそうです。さらに、「先生の説教が始まった」「母の愚痴が始まった」などになると、自分はそこから逃げ出したいという気持ちが感じられます。

 あなた方はいまから人生を「始めよう」としているのであって、人生が「始まろう」としているのではありません。人生が「始まる」ひとにとっては、人生はすでに誰かの敷いてくれたレールの上を走ればよいというものです。あなたまかせの人生です。しかし、人生を「始める」ひとは、自分の計画と自分の資力に応じてレールを敷き、自分の力でその上を走らなければなりません。これは大変なことで、ときには苦しいこともあります。しかし好きなところへ行けるし、どこへいくのも自由であり、はるかに生き甲斐のあることです。

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