「イラクにも戦争後遺症に苦しむ人がいる

平成16年2月8日 

 本誌二月六日付夕刊のアレン・ネルソン氏の談話記事は衝撃的であった。ベトナム戦争帰還後十八年間後遺症に苦しんだという氏の話には、生き証人としての語り部の重みがある。

 氏によれば、戦争の悲惨さや非人間性には二つの面がある。一つは、戦場で兵士たちはすべて殺人マシンと化し、敵を砂漠のサルか人間以下のものと見なして殺す。それが「兵士の宿命」という。

 もう一つは、戦争体験が後遺症として残り、元兵士たちを狂わせるということだ。ベトナム帰還兵は全米路上生活者の八割を占めるというし、自殺者は十万人にも上るとか。イラクの若者も早晩「同じ境遇を経験するだろう」という。

 自衛隊のイラク派遣には賛否両論がかまびすしい。しかしいずれに組みするとしても、わが自衛隊の赴くイラクには、そのような後遺症に苦しんでいる、あるいは苦しむだろう元兵士や被災民が多くいることだけは忘れてはなるまい。

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