「私を動かした塙先生の話」

安藤 邦男

「キャンパスわくわく世代交流の集い」(長寿社会振興センター 2002年11月発行)掲載


 校門を入ると、次々に「お早うございます」という元気な声に迎えられた。近ごろの女子大生には、珍しくしっかりした挨拶である。

 講義室では、ASC(愛知シルバーカレッジ)のOBたちの顔が見える。講演が始まった。しばらく、なんとなくぼんやり聞いていた私は、講師の言葉にハッとした。「人間は動物の一種で、動物とは『動くもの』のことです」。

 一年前、ASCでの講義で、同じ言葉を聞いた記憶が蘇った。今日の講師がそのときの塙先生であることに、初めて気づいた。年だな、と情けなかった。しかし、先生の顔と声は忘れても、その言葉だけは覚えていた。

 思えば、あのときの「動物とは動くもの」という言葉は、私にそれほど強烈な印象を与えた。以来、ウォーキング信奉者となって、私は家の内や外を「動物」よろしく歩き回った。その習慣は、今日まで続いている。

 ふたたび、塙先生の名調子に酔いしれながら、私たちは老いてからの運動の大切さを痛感していた。

 昼食をはさんでの学生たちとの懇談会では、若ものに返って意見交換に熱中した。その後の体育の実技では、子どもに返って老躯を動かした。楽しい一日であった。またこんな会があったらぜひ参加したいと思いながら、帰途に着いた。

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