(2)生々流転することわざ         安藤邦男

    《 多くの変化や交替を繰り返す》

@ 新と旧の交替


 ことわざは常に変化していきます。それは、日本語が若者コトバや流行語によって変化を与えられるのと同じであります。時代の流れにともなって新しいことわざがつけ加えられることもあるし、消えていくことわざもあります。

 例えば、北野たけし氏がツービート時代につくった
「赤信号みんなで渡れば怖くない」ということわざは、いまでは多くのことわざ辞典に採用されています。そのほか「亭主元気で留守がいい」とか「ブタもおだてりゃ木に登る」とかいう新しいことわざも、辞典に採用されています。

 一方、
「めくら蛇に怖じず」なんていうことわざは「めくら」が差別用語だからというので、多くのことわざ辞典から削除されています。このように、ことわざの世界では新陳代謝が激しいのです。

A 表現の変更


 いままでのことわざを少し変化させて使ううちに次第に新しいことわざとして定着していくということもあります。例えば、橋田壽賀子作のテレビドラマ、
「女は度胸」「渡る世間は鬼ばかり」などは、それぞれ「男は度胸、女は愛嬌」「渡る世間に鬼はない」の言い換えですが、いまではむしろ前者の方が有名になっているほどです。

B 意味の変化

 それからもう一つ、ことわざは省略が多いので、どうしても意味が間違って取られがちです。それに、比喩や喩えが多く用いられるので、それが本来もっていた意味と違った解釈をされることもあるのです。そして、その間違った解釈も、多くの人がそのように使っているうちに次第に定説として認められるようになるのです。

 例えば、日本語ことわざの

「犬も歩けば棒に当たる」

は、犬が出歩くと棒で叩かれることがあるように、人間も出しゃばるとろくなことがない、という意味でした。ところが次第に意味が転じて、いまでは動き回ると思いがけない幸運に出会うことがある、だから積極的に行動せよ、という意味に使われるようになりました。これなどは、「棒」の意味が、初めの悪い意味からだんだんよい意味に変わっていった例です。

 英語のことわざにも、これによく似た例があります。


A rolling stone gathers no moss.「転石苔を生ぜず」


ということわざがあります。これは、どういう意味だと皆さんは思いますか。解釈のポイントは、「こけ」をどう考えるか、ということです。こけを貴重なものだと考えれば、コケがつかないのは転がるからで、だから《転がる石はだめだ》ということになります。一方、こけをカビと同じようなつまらぬものと考えれば、転がっていればカビは生えないから、《転がる石はいいものだ》ということになります。

 前者は従来のイギリス人の解釈ですが、後者は新しくアメリカ人などが下した解釈です。アメリカは、ご承知のように活動的・流動的社会ですから、1箇所に留まることを好まず、むしろ転職や転居の方を選ぶのです。

 今では、アメリカではもちろんイギリスでさえも、
《活動的な人は常に新鮮さを保つ》「流れる水は腐らず」という意味で使われるようになってきました。さて、皆さんはどちらの考えをと採りたいと思いますか。

 さて、ことわざはこのように、意味が移り変わっていくのです。そのことを知ってもらうために、次の問題をやってください。

 ここには(a)(b)二つの解釈が並べてありますが、一つは正しい解釈ですが、もう一つは間違った解釈、すなわちまだ正用法として認められていない解釈です。

【クイズ1】


NEXT HOME