ステアリングステム ベアリングの交換

04年4月

 

昨年(03年)の暮れに転倒して以来、どうもSRXのハンドリングが悪い。転倒の衝撃でフロントフォークがネジれてタイヤのセンターが出ていないのが原因だろうと思い、蹴っ飛ばして直してみたものの、どうもスッキリしません。タイヤが磨耗しているので、その影響でしょうか。バイク屋さんに相談してみると、「ステムベアリングってグリスアップした?」と。うっ・・痛い所を指摘されました。いや、気になってはいたんですが面倒臭くてねぇ。

 

分解作業

僕がSRXを入手してからは一度もステアリングステムのグリスアップをしていないし、フォークのネジれを根本的に直す為にも、一度ステアリング周りをバラした方が良いでしょう。

手順としては大雑把に

1 エキパイを外す。

2 主要なボルトを少し緩めておく

3 リヤタイヤにストッパーを当てる

4 ジャッキでフロントを浮かせる

5 ブレーキキャリパ タイヤ フェンダー メーターケーブル等を外す

6 フォークを抜く

7 ヘッドライトを外し、ライトカバー内のコネクターを外す

8 ハンドル、メーターを外す

9 アッパーブラケットを外す

10 ライトステーを外す

11 ステムを外す

と、こんな感じ。

主要なボルトを予め緩めておくのは、フロントを浮かせた不安定な状態で、車体に大きな力を掛けたくないからです。フロントアクスル、キャリパー ステムのフォーククランプ部、ステムナット等は、予め少し緩めておくと楽です。ただし、フォークのクランプボルトは全部緩めてしまうとフォークが抜けてしまうので、上下のどちらか片方は締めたままにしておきます。SRXの場合は、アンダーブラケット側のボルトの方が作業しやすいので、アッパーブラケット側を先に緩めておくと良いでしょう。

フロントを浮かせる際にリヤにストッパーを当てるのは、持ち上げると車体が後ずさりするからです。フレームのダウンチューブが水平になっていないのと、車体が軽過ぎるのが問題みたいです。今回は車用の輪止めを使いましたが、それでもストッパーごと下がってしまうので、ガレージの壁に角材を置いて、それ以上は絶対に下がらないようにしておきました。それでも不安定です。センタースタンドが有れば良いのですが、重整備を行うならきちんとした市販のスタンドを用意した方が良さそうです。今回は多少でも手間が掛からないようにする為に、ジャッキアダプターを作ってみました。エキパイを避けてフレームを持ち上げる為にコの字型になった物です。これならエキパイを外さなくてもダイレクトにフロントを浮かせる事が出来ます。

エキパイを避けてフレームを押し上げる為のジャッキアダプター。

エキパイを外さなくても車体を持ち上げる事が出来るので、手間が省けます。

 

車体を浮かせてタイヤを外した後、ハンドルを左右に動かしてみると、ちょうど直進付近でコクッとクリック感が。いや、僕の勘違いかもしれない。再度動かしてみると、やはりクリック♪クリック♪ 何度動かしてもベアリングが直るはずもなく、やっぱりダメみたいです。フォークを抜く時はすんなりと抜けましたので、フォークのネジれは問題なかったみたいです。これで完全に分解せざるを得なくなってしまいました。

丁度真っ直ぐな位置でクリック感が。

以前フォークを修理した時は気付かなかったので、

ここ最近進行したのか、はたまた転倒の衝撃でトドメを刺したか。

 

ヘッドライトを外します。ライトはライトケースの下に有る2本のビスを外すと取れます。ケースの中のコネクターを外してハーネスの縁を切ります。大抵の場合は接続する電線は同じ色同士ですが、マレに違う場合があります。今回はウインカーが社外品になっていた為に、ポジションランプの電線が無く、組み立て時に電気図面とにらめっこするハメになりました。外す電線は確認しておきましょう。

ハンドルバー、メーター、アッパーブラケットを外し、ライトステーを外し、ステムのロックナットを外すとステアリングステムが外れ、問題のベアリングとご対面。SRXは上下ともボールベアリングが使われているので、この時ボールが転げ落ちて無くしてしまわない様に注意(特にロア側)。ボールは上下とも19個です。ステムを外すと、アッパーベアリング側がグリス切れを起こしていました。ボールレース(ベアリングのボールが転がるレール)を拭いて見ると、磨耗した跡が確認できます。ロア側は綺麗なグリスが入った状態でしたが、わずかに磨耗の形跡が見えます。ロア側は交換が面倒なので出来る事ならパスしたいのですが、掛かる負荷はロア側の方が遥かに大きいし、コーナーリングマシンにとってステアリングステムベアリングは生命線とも言える非常に重要な所です。ここまで分解したのなら、交換するしかありません。

フレーム側のレースは叩けば簡単に取り外せるのですが、問題なのはステムシャフトに付いたロア側のレース。毎度の事ながら、ステムとレースの隙間がほとんど無くて、叩きぬく事が困難です。今回は一般的な方法ではありませんが、旋盤の3爪チャックでレースを挟んでステムシャフトの方を叩いて抜きました。SRXの場合はボールベアリングなのでステムシャフトとレースの接触面積が小さく、抵抗が少ないのでレースを掴んで叩き抜く事も可能ですが、一般的な掴み工具のバイス等では2点でしか掴む事が出来ないので、保持力が弱く難しいかもしれません。なお、ステムシャフトを叩く時は先端にナットを取り付けた状態で叩き、シャフト先端のねじ山が傷まない様にします。また、レースが抜けた瞬間にステムが落下して、傷めてしまわない様に注意します。

ステアリングステムのメンテナンスをするには、ここまでバラさないといけない。

ネイキッドは余計な物が付いてない分整備しやすいかと思いきや、

ステアリング部分に全てのモノが集中しているので意外に面倒。

と言うか、ガレージ散らかり過ぎ。

車体の張り紙は、子供が触って倒さないように注意を促す物。

自分がバイクの下敷きになるのは笑い話で済むが、

子供が下敷きになると笑えない。

タンクに古着のTシャツを載せておくと、傷防止に丁度良いです。

 

問題のステアリングステム ベアリング(画像はロア側上のレース)。

ベアリングのボールと擦れ合って磨耗した跡が点々と見えます。

画像はアッパー部の下側(ステアリングヘッド上側に収まる物)。

今回はアッパーの方がグリス切れを起こしていた為にアッパーの方がより傷んでいたけれど、

ロア側も薄っすらと磨耗痕が見えます。

ロア側の交換は面倒ですが、負荷はロアの方が厳しいでしょうから、

上下とも交換します。

 

部品の発注

バイク屋さんに部品を注文します。ステムベアリング上下のレース1対づつと、ボール、それにシールが1つ。ところがバイク屋さんは「ボールはそのまま使うよ。」とのこと。ステムベアリングはホイールベアリングの様にグルグル回転する訳ではないので、ボールも偏磨耗するような気がします。本来ならベアリングレース、ボールのセットで交換するのが望ましいのでしょうが、バイク屋さんも僕の苦しい懐事情を考慮してのアドバイスでしょうから、今回はレースだけ交換する事にします。

 

組立作業

ベアリングレースはロア側の上下、アッパー側の上下、計4個有りますが、全て違う物です。組み付ける場所が違えば組めないので分かると思いますが、念のため確認しながら作業します。先ずは、ステムシャフトにシールを取り付けます。シールは向きが有ります。間違えると、折角の新品のシールも機能しないので注意。また、当然ですがレースを組む前にシールを取り付けないと、後からシールは取り付けられないので注意。次にステムシャフトにレースを取り付けます。レースは叩き込まないと入らないのですが、無闇に叩くと折角の新品のレースにダメージを与えかねません。軸にベアリングを挿入する場合は、本来軸との接触部分(ベアリングの内側部分)に力を加えるのですが、このベアリングレースは内側部分の余裕が1、2mm程しか無くて、上手く叩く事が出来ません。レースにもステムシャフトにもダメージを与えない様にする為に、挿入する新品のレースの上に、取り外した古いレースを乗せて叩きます。レースの外周に力が作用しますが、傷めてしまうよりはマシです。この際やむを得ません。上に乗せる古いレースはロア側の上レースを使います。アッパー側は内径が小さ過ぎて入りませんし、ロア側下のレースを使うと新品と一緒にハマって取り外せなくなります。

取り外すのも、取り付けるのも面倒なベアリングレース。

 

次にフレーム側にレースを挿入します。アッパー側は叩きやすいですが、ロア側は作業し難いので注意。今回フレームのレースのはめ合い部分にバリが出ていました。恐らく前回レースを叩き込む時に少し傾いていたのでしょう。バリを取ってなるべく平行になるように叩き込みます。レースを入れた後、古いボールを綺麗に掃除して、グリスを付けたレースに乗せてステムを組みます。ロックナットを一度思い切り締めてベアリングを密着させた後に緩めて、再度締め付けます。この締め付け加減が微妙。強過ぎず弱過ぎず、ボールとレースが接触しつつ圧迫しない程度に。トップブリッジの袋ナットはかなり強いトルクで締める様指示されています。ステムだけの状態で締め付け作業を行うと、トップブリッジとアンダーブラケットがズレてしまい、フォークが上手く組めなくなってしまいます。ナットを締める前にフォークを仮組みし、フォークとフレームのステアリングヘッド部分の間に棒切れなどを突っ込んでステムを保持し、ナットを締め、ステムが上下でズレてしまうのを防ぎます。また、このトップブリッジのナットの締め加減も、ステムベアリングに影響するので注意。

後は元通りに組み立てるだけですが、フォークまで組んだ辺りで再度ハンドルを左右に動かし、スムーズに、かつガタつきが無く動くかどうか確認しておきます。また、フォークがスムーズに取り付け出来るかどうかで、アッパーブラケットとアンダーブラケットのズレが無い事を確認しておきます。タイヤをつけて、アクスルシャフトを締め、アクスルシャフトのクランプを締める前にフォークの平行を出します。この辺りは以前のフォークシールの交換でも書いたので割愛。

もし、作業終了後にステムのロックナットの締め具合が悪くてやり直す場合は、全部バラさずに、トップブリッジの袋ナット、ハンドルバーのクランプボルト、アッパーブラケットのクランプボルトを緩めて、フロントを浮かせた状態で行います。アッパーブラケットをフリーにして無理が掛からない様にする為に、ハンドルとアッパーブラケットのフォーククランプボルトを緩めておきます。この状態で、ハンドルを動かしながらギザギザのロックナットの締め加減を調整し、ガタつきがなく、かつスムーズに動く状態にします。ここでも、後からトップブリッジの袋ナットを締め付けると加減が変わる事に注意。ギザギザロックナットを調整したら、トップブリッジのロックナットを規定値で締め、ハンドルとアッパーブラケットのクランプボルトを規定値で締めます。

 

で、どうなったかというと

作業終了後に、一通り作業で緩めたボルト類を締めたかどうか確認しておきましょう。特にブレーキやハンドル、ホイール周りのボルトの締め忘れは致命的です。あと、ブレーキパッドがブレーキディスクに当たるまでレバーを繰り返し握っておくのを忘れずに。作業後は各部の点検の為にゆっくりと走り、異常が無いかどうか確認します。どれも当たり前の事ですが、ステアリングに異常が有れば非常に危険であり、ホイールやブレーキ等の走行にとても重要な個所も作業で外しているので充分な確認を行う必要が有ります。作業後に走ってみると、とてもスムーズに動くようになりました。

ステアリングステム部分は、バイクにとって最も重要な部分です。パワフルなエンジンも、素晴らしいサスペンションも、ステアリングステムに不具合が有れば台無しです。しかし、ベアリングの損傷は外から見ただけでは分かりませんし、徐々に進行するので普段の運転で判断する事も難しいです。グリスが切れていないかどうかは、もう分解してみないと分かりません。非常に重要な個所で、整備には知識とノウハウが必要になりますが、決してメンテナンスフリーではありません。SRXの場合は上下共ボールベアリングで耐荷重が低い上に、アッパー側にはシールが有りません。今回の状況を見ても、アッパー側のグリスの保持力はほとんど無いに等しいと言えるので、短いスパンでの定期的なメンテナンスが必要です。ステムベアリングの交換作業は素人にとっては難易度が高いものですから、交換が必要な状況になってしまう前に、普段から気を配る必要が有ります。保管状況が悪い、雨天も走行する、ジャンプせずには居られない、ウイリー大好き♪という人は特に注意した方が良いでしょう。なお、ステムのロックナットの締め加減も、素人では判断が難しいです。かく言う僕もガタが出てやり直しました。トライ&エラーを繰り返せば良いのですが、ガタつきも締め過ぎもベアリングに悪影響を与えてしまうので、自信が無い人はバイク屋さんに頼んだ方が結果的には早くて安上がりかもしれません。

しばらく整備していないという人は、一度フロントを持ち上げてハンドルを切ってみましょう。症状が出てからでは既に手遅れだと思いますが、放置しても悪化するだけで直りませんからね。

 

今回の出費

256−23411−00 ボールレース(ステム下側下) 1,230円

256−23412−00 ボールレース(ステム下側上) 1,230円

256−23413−00 ボールレース(ステム上側上) 1,230円

256−23414−00 ボールレース(ステム上側下) 1,230円

164−23462−00 ステアリング シール       310円

 

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