MTSAT-LRIT
経緯
HRPTはデジタル通信ですがエラー訂正などは盛り込まれていない初期の方式です。
ところが最近の衛星通信はエラー訂正を本格的に使った方式が主流になってしまいました。
BPSK/QPSK復調、Viterbiエラー訂正、 デジタルフィルター等をFPGAやソフト処理で対応する
時代になりました。これらの技術は私のようなアナログ時代の人間には敷居が高くて簡単には
吸収できなくて苦労していました。
こんな時米国市場で旧式のサテライト・モデムが出回っている事を知りました。この製品は
衛星通信の為に使われていた物でデジタル送信/受信機能を装備しています。特徴は
仕様パラメーターのほとんどがプログラマブルでユーザー解放されていて色々な衛星仕様に
フレキシブルに自分たちで対応できる汎用性にあります。その上中古価格がUSD100以下で
送料込みでもUSD200程度の物もあります。これを知った時 衝動買いを止める事が
できませんでした。
今回入手したモデムはSDM-300Aと言うモデルでPDF英文取説も入手できます。
MTSAT-LRITは周波数1691MHz BPSK Viterbi 1/2 DATA_Rate=75KHzで
COMS-LRITは周波数1692.14MHz BPSK Viterbi 1/2 DATA_Rate=256KHzですが
これらの信号を余裕で受信できます。
この製品を使ってMTSAT-LRITを画像化できるようになったので ご紹介します。
MTSAT-1は軌道要素ではHIMAWARI-6で登録されています。COMSについても記載していますが
データは入手できてもキーコードの入手ができなくて画像は見られません。
アンテナ
アンテナはHRPT用に使っている1.8mパラボラでヘリカルアンテナ プリアンプもそのままです。
ダウンコンバーター
最初はHRPTで使用しているCS-TUを改造したダウンコンバーターを使いましたがダメでした。
AUX1端子に含まれるI/Q出力をオシロのXYに接続して表示できるコンスタレーション波形が
点にならずに分散していました。これはFMノイズ成分が多いからです。そこでSGでOSCを
代用したところ安定して受信できました。
現在はSGの代わりにADF4350を用いたダウンコンバータを用意して使っています。回路図
OSC=1557MHzにしているのでMTSAT-LRITの最終出力は134MHzとなりこれが
モデム受信部への入力となります。
| MTSAT-1のコンスタレーション BPSK | COMSのコンスタレーション BPSK |
![]() |
|
| OSCにADF4350を使っています。 | MetOp-Aのコンスタレーション QPSK |
受信機の設定
SDM-300Aのパネルには6つの操作キーが用意されています。設定は階層構造となって
いるのでどこにあるのかを取説をよく読んで理解しておく事が必要です。
ここではMTSAT/COMS-LRIT受信のために必要な項目を取り上げます。
●受信衛星情報の予約方法 FunctionSelect--->Utility---->Demodulator
| Item | MTSAT-LRIT | COMS-LRIT | MetOp-A | |
|---|---|---|---|---|
| 1 | ReceiveFilter Input RX-A,B,C,D,V |
RX-A BPSK 1/2 Rate=75.000Kbps |
RX-B BPSK 1/2 Rate=256.000Kbps |
RX-C QPSK 3/4 Rate=3500.000Kbps |
| 2 | Demodulator Type | INTELSAT OPEN | INTELSAT OPEN | INTELSAT OPEN |
| 3 | DecoderType | Viterbi | Viterbi | Viterbi |
| 4 | RX BPSK ordering | NON-STANDARD | NON-STANDARD | NON-STANDARD |
| 5 | DemodSpectrum | NORMAL | NORMAL | INVERT |
| 6 | RX symbol rate | 150.000Ksps | 512.000Ksps | 2333.333Ksps |
●受信条件の設定 FunctionSelect--->Configuration--->Demodulator
| Item | MTSAT-LRIT | COMS-LRIT | MetOp-A | |
|---|---|---|---|---|
| 1 | RX-A,B,C,D,V | RX-A | RX-B | RX-C |
| 2 | RX-IFfrequency | 134.000000MHz | 135.140000MHz | 144.300000MHz |
| 3 | Descrambler | OFF | OFF | OFF |
| 4 | DiffDecoder | ON | OFF | OFF |
| 5 | RFloopBack | OFF | OFF | OFF |
| 6 | IFloopBack | OFF | OFF | OFF |
| 7 | BER threshhold | NONE | NONE | NONE |
| 8 | SweepCenter | 0 Hz | 0 Hz | 0 Hz |
| 9 | SweepRange | 60000 Hz | 60000 Hz | 60000 Hz |
| 10 | ReAcquisition | 1 sec | 1 sec | 1 sec |
●その他
OPTIONでリードソロモン基板が付いていると その項目が追加されて表示されるように
なります。しかしリードソロモンの処理はモデムでは行わずにPaulさんソフトで行って
いるので ここでは”OFF”に設定します。
以上の設定値をSAVEしておけばRECALLで呼び出せるようになります。
FunctionSelect--->Configuration--->SAVE (例) ここで#1を指定する。
FunctionSelect--->Configuration--->RECALL #1 指定で復元可能
中古のモデムでは電池が寿命の場合があります。その場合POWER-ONで工場出荷状態に
なってしまいます。電池に時計用発振子を内蔵した特殊な部品ですがRScomponentで
購入できました。 型名 M4T28-BR12SH1送料込みで¥1032
子亀構造になっていてICに載っています。
電池は0.6vぐらいで記憶不可能となり新品で3.2vでした。
受信機の改造
SDM-300Aの出力(DAT/CLK)を取り出してFramer基板でUSBに変換してPCへ転送する
方法を記述します。まず信号を取り出す場所ですが出力コネクターには色々な種類があり
これを使うのは得策ではなさそうです。内部の基板から取り出せば共通になっている可能性が
高いと睨んで探してみました。ありました。電源ブロックの近くに3列の大きなコネクターJ7が
ありますが その隣にJ8 30pin のコネクターが それです。
このコネクターはSDM-300/300Aどちらにも共通しています。
上図のように3本取り出します。
SDM-300A内部は+5v動作です。Framer基板部は+3.3v動作なので抵抗で分圧して
接続する事に なります。その回路図は
タイミングはCLKの立ち下がりでDATが変化する関係です。
Decoder+Framer基板の改造
Decoder+Framer基板をHRPT受信機と共用する時は次のPDFを参照してSW-Cを追加し
外部からDAT/CLKを入力できるように改造します。
新Decoder+Framer回路図
2012-01-27
Framer部の設定はSW-Aは不問 SW-BはMHRPTモード SW-Cは外部入力です。
ソフトの設定
PC側の受信ソフトはBMsatのLRIT追加版で行います。また画像化の処理には
オーストラリアのPaulさんが開発中のソフトを使わせて頂きます。教育用のソフトかも
知れませんがLRITの処理をステップ毎に行い その結果を確認できるようにファイルに
記録を残す方式になっています。このPaulさんソフトの動作環境の制約で動作フォルダーを
C:\images にする必要があるので全てのソフトを そこにダウンロード展開します。
BMsat v1k
PaulさんのHPからUnraveller /Lritview /ljpgtoraw をダウンロ−ド
BMsatの設定
衛星名=LRITを選んで走らせると受信画像を表示しないで次のような画面となります。
保存するファイル名は asm_cadu-yy-mmdd-hhmm.cad となっています。
1時間ぐらい記録したサンプルデータは下記よりダウンロードできます。
asm_cadu.cad sample
Unravellerの処理
LRIT画像化の処理を10ステップに分けて表示されていますが ここでは”P-N Descrambler"
から”Transport Layer”まで順に行います。
ファイル名は保存したファイル名から”日付時間”を消して"asm_cadu.cad"にしておいてください。
Ver-Up が行われて上記10ステップ作業を自動で処理できるようになりました。
ダウンロードしてUnravellerと同じディレクトリーに保存してください。
展開すると下記テキストファイルが出てきます。
RUN-MTSAT 自動処理を行うバッチ・プログラム
MTSAT-LRIT Unravellerのコマンド処理を記したconfファイル。
実行する時はRUN-MTSATをダブルクリックするだけです。途中で発生した中間ファイルを
削除して次のLRITviewの起動まで行います。
最後まで処理が終了するとIMG_ で始まる画像データが一杯出来上がります。
(ファイル名に含まれる日時はUTC時間です。)
LRITviewを使えば それらを画像として見る事が出来ます。
画像ファイル名がIMG_PSxxxxの場合は天気予報でおなじみの形式です。Displayをクリック
すると表示します。IMG_DKxxxxの場合は丸い地球画像で10個のデータを合成します。
ファイル名を指定する時10個のうち どれかを指定すればOKです。
Mergeをクリックすると自動で10個を合成して表示します。
画像の保存にはkioku等のキャプチャーソフトを使います。Ver-UpによりDISK画像は
2200x2200 の画像を保存可能となりました。FullResとSaveToDiskにチェックを入れておけば
Mergeを押した時pgm画像ファイルとして保存されます。この画像はJpgやGifのようにメールや
ホームページでは見られません。無料の画像ソフトInfan Viewで見る事ができました。
このソフトでJpgやGif等に自由に変換できるので便利です。