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安全なフェンシングを求めて
  〜マレージング剣とは何か〜
Fencing Safety:The Maraging Blade
著:Walter Flaschka 2004年1月1日
オリジナル Original article

フェンシングには長く、血生臭い歴史がある。そしてフェンシングを知らない人々はよくフェンシングを未だに危険なままのスポーツだと思いこんでいる。 しかし、近代のオリンピック種目の中では、フェンシングは最も安全な競技の一つであるということが分かる。 社会からの誤解を解く意味合いからも安全性は厳格にモニターされているし、用具の基準はほぼ毎年厳しくなっている。

その結果として、1937年以来重大な事故は7件しか記録されておらず、その殆ど全てが高いレベルの試合において熟練したフェンサーに起こっている。
スポーツ障害の疫学的調査:フェンシング編より

より安全なフェンシングという機運は、1982年のトーナメントにおける、ソ連のチャンピオン、ウラジミール・スミノフの死によって高まった。 ローマでの世界選手権において、剣が折れてスミノフのマスクに突き刺さり、彼は致命傷を負ったのだ。 この事故はフェンシングの僅かな悲劇の一つだが、非常に例外的な事故であったこと、そして世界のフェンシング・コミュニティに用具の基準を高めさせたという点で特筆すべき事故であった。

それ以来、宇宙時代にふさわしい最新の素材と技術がフェンシングにつぎ込まれるようになり、この競技を世界で最も発展したスポーツへと成長させた。 ケブラー(R)繊維や、バリスティックナイロン(防弾チョッキなどに使われる素材:訳者注)、そして飛散防止加工のされたLEXANマスクはフェンシングをゴルフと同じくらい安全なものにした。 そして最も重大な変化はブレードそれ自身に起こった。 高度に訓練されたフェンサーの手の中にあっては、最も重い剣であっても柔軟で軽いように見える。 世界選手権の試合のスロー再生を見ると、どんなに堅く、鍛えられた剣であっても、大きな圧力がかかることでまるで液体のように見えたり、また壊れやすく見えたりすることが分かる。 突いた瞬間の剣はしばしば180度折れ曲がっているし、時には妙な方向を向くこともある。 フェンシング業界は圧力がかかってもその形を保つことができるくらい堅い剣を必要としている。巨大な圧力がかかったときに円に沿うように曲がり、そのために折れにくく、そしてもし壊れたとしても綺麗に折れるような剣を。そこで、マレージング鋼の登場である。

■マレージング剣

80年代に導入されて以来、マレージング剣は鉄、ニッケル、そしてチタンを含む鍛鋼との合金として鍛造されてきた。 この鋼(HRc 52−55)はステンレススチールの2倍の硬度を持ち、そして純粋なチタンより85%硬い。 剣の中に発生・成長しついには剣をぱきっと折ってしまう微少ひび割れ(マイクロクラック)は、従来の鋼と比較すると5%しか発生しないようである。

マレージング剣は硬く、丈夫で、数千回以上の屈曲試験においても他の剣に比べて長寿命である。 傷が付きにくく錆び付くのが遅いので、初期のマレージング剣にも未だ現役で使われているものがあるだろう。 折れるときも、鋭い断面を作らずにだいたい水平に折れる。

マレージング剣はブレーズ・フレーレの様なフランスのサン・アティエンヌの近くに位置する鍛冶工場と話し合って製造される。 1885年操業のブレーズ・フレーレは武器の生産のためにコンピュータ制御のロボット鍛造システムを使用している。 彼らの製造した印である「BF(ブレーズ・フレーレの頭文字:訳者注)」からフェンサーは剣の出自を知り、そしてトリプレットやウルマン、アルスターのような用具メーカーからその剣を買う。

この全ての技術が低価格で実現されるわけではなく、フェンサーは60ドルから100ドルを一本の剣に費やす覚悟をしなければいけない。 殆どの競技者にとってラッキーなことは、これらの剣はハイレベルの国内大会や国際大会でのみ必要だということである。 標準的な剣に加え、現代のマスクやジャケットは、数十年前に比べて格段に進化しており、低いレベルの大会においては十分に安全であると見なすことができるだろう。

そして、フェンシングが爆発的な成長とセレブなフェンサーたちの時代に突入すれば、ブランドものの剣も登場してくることだろう。 ゴルビツキー・プロという剣はウクライナの天才的フェンサーであるセルゲイ・ゴルビツキー氏の特別な要求に沿ってデザインされ、そして用具メーカーであるレオンポールを通じて提供されている。 この特別な(そして高価な)剣は、手にかかる剣の重さを再配分することでより良いバランスと正確な剣先のコントロール性を備えている。

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