教訓 58. 不幸の後には幸福が来る。


Every cloud has a silver lining.《どの雲にも銀の裏地がついている》


 楽観的見方をすすめるコトワザの背景にあるものは、むしろ厳しい現実生活です。その苦しさを軽減させるためには、明るい楽天主義が必要なのです。「禍福は糾える縄の如し」ですから、不幸の次には必ず幸福が訪れます。見出しのものも、不吉な雨雲の向こう側には太陽の光明が輝いていると指摘し、不幸にあるものを勇気づけてくれます。「待てば海路の日和あり」「苦あれば楽あり」に相当するコトワザは、次のように多くあります。

(a) Everything will turn out for the best.《何ごとも最善に向かうものである》
(b) The worse luck now, the better another time.《今は運が悪くても、いつかはよくなる》「禍も三年経てば福となる」「災いも三年たてば役に立つ」
(c) Tomorrow is another day.《明日という日がある》「明日は明日の風が吹く」

(c)は、映画「風と友に去りぬ」のラストシーンで、ヒロインのスカーレット・オハラがつぶやいた言葉としても有名です。レッド・バトラーに去られたスカーレット・オハラは、愛するふるさとタラの土地で、ひとり雄々しく生き抜こうとします。映画では、この言葉は、「明日という日がある」とか「明日は明日の風が吹く」とか訳されています。

(d) The third time lucky.《三度目は幸運》「三度目の正直」
 = The third time pays for all.《三度目はすべてを償う》 「三度目の正直」
(e) Every dog has his day.《どんな犬にも最盛期がある》
(f) After night comes the day. 「朝の来ない夜はない」
(g) The longest day must have an end.《どんな長い日でも終わりがある》
 = The longest night will have an end.《どんな長い夜でも終わりがある》
(h) It is a sad (or poor) heart that never rejoices.《どんな悲しい心でもいつかは喜ぶものである》
(i) It is a long lane (or way, or road) that has no turning.《どんな長い道でも必ず曲がり角がある》
(j) It is an ill wind that blows nobody any good.《どんな風でもだれかには幸運を運ぶ》「風が吹けば桶屋が儲かる」

 次の(k)〜(o)は、同じ楽観主義を天候や気候に関するコトワザで言い表します。これらのものは、本来天気コトワザとしての役割を担っていたものですが、次第に一般的教訓を含むものとして、使われるようになったものです。

(k) After a storm comes a calm.《嵐の後には凪がくる》「雨降って地固まる」
          別掲 → 教訓2 ものには対立する相手がある。
(l) Cloudy mornings turn to clear afternoons.《朝の曇りは午後晴れる》
(m) Rain before seven, fine before eleven.《7時前の雨は11時前に晴れる》
(n) March winds and April showers bring forth May flowers.《3月の風と4月の雨で5月の花が咲く》
 = April showers bring forth May flowers.《4月の雨は5月の花を咲かせる》
(o) If winter comes, can spring be far behind? [Percy Bysshe Shelley]「冬来たりなば、春遠からじ」

(o)は、抒情詩人シェリーの「西風に寄せる歌」の一節ですが、引用句として多くの人に愛唱されてきました。口ずさめば、だれにも冬の厳しさに堪え抜こうとする勇気が湧きます。

 次の楽観主義のコトワザは、もっと具体的に、失敗からの立ち直りを忠告してくれています。

(p) Fortune knocks at least once at every man's gate.《幸運は一度はだれの門にも訪れる》
(q) What one loses on the swings one makes up on the roundabouts.《ブランコでの損は回転木馬で取り返す》(一方で損をしても他方で取りもどせる)
 = What you lose on the swings you gain on the roundabouts.
(r) Lightning never strikes twice in the same place.《雷は同じ場所に二度と落ちない》

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